春ギフトに!カカオサンドクッキー

【お知らせ】神戸学校(講演)の収録動画をご視聴いただけます

2021年10月23日に開催された神戸学校が無事に終了しました。

 

 

テーマは「カカオの可能性」について。弊社代表の吉野を含む3名のゲストスピーカーと共に、「ビジネス」、「ショコラティエ」、「科学」の3つの観点から、カカオの持つさまざまな可能性を探っていきました。

 

1人目のゲストスピーカーの上野さん(株式会社DK-Power)は、石川県加賀市で「カカオの森づくり」に挑戦しています。本来カカオは赤道直下の環境でしか栽培できず、日本ではカカオを栽培することはできないと言われていました。しかし、近年では沖縄でもカカオの栽培が試みられ、カカオの栽培可能地域が少しずつ変化しつつあります。

 

石川県加賀市は日本有数の温泉地帯であり、温泉の排熱を利用してカカオを栽培しようというのが「カカオの森づくり」プロジェクトです。カカオを植えてから収穫できるまで5年ほどかかりますが、その間にどんなことができるか、といったようなことも含めて議論が交わされました。

 

2人目のゲストスピーカーの永井さん(株式会社ANBAS代表取締役・一般社団法人サイエンティフィックアロマセラピー協会代表理事)は、カカオと健康をテーマに研究されており、カカオが人間の身体にどのような影響をもたらすのか、カカオが秘める可能性について解説されました。カカオの香りが自律神経を刺激することで、脂肪分解効果や美容効果を与え、直接口にするとカカオの濃度によって血圧の低下や睡眠の促進などの作用もあるとの実験結果が出ており、人間の体に様々な良い作用をもたらすことが期待されています。

 

3人目のゲストスピーカーの吉野(弊社代表取締役)は、カカオ農家を取り巻く現状やDari Kを創業した経緯のほか、カカオの可能性を広げる取り組みとして、グラインダーやマイクロ波焙煎を中心に話が進んでいきました。

 

3人のゲストスピーカーによるパネルディスカッションでは、会場やオンライン中継を通して寄せられた質問への回答も含め、議論が活発に交わされました。途中で「カカオに運命を感じますか?」という視聴者の方からの質問も飛び出し、笑いに包まれた場面も。

 

そんな講演の様子をご覧いただける動画が11月12日より配信されましたので、ご関心のある方は以下URLよりぜひご視聴ください(有料)。

 

『神戸学校online』サロン2021年10月度「Cacao for the future」~カカオの可能性を開く3名のお話~【ゲスト:上野 祟さん〈株式会社DK‐Power〉・吉野 慶一さん〈Dari K株式会社〉・永井 克也さん〈(株)ANBAS〉】 - フェリシモ オンラインサロン (felissimo.co.jp)

 

【参照】

フェリシモ カカオの可能性を開く3人のメッセージライブ収録動画配信を11月12日にスタート。 「神戸学校online」|株式会社フェリシモのプレスリリース (prtimes.jp)

【吉野に聞く】なぜDari Kは自社農園ではなく、契約農家制を採用しているのか?(第4回)

インドネシアのスラウェシ島に約500軒の契約農家がおり、Dari Kはより品質の高いカカオ豆を作ろうと、契約農家さんと共に日々奮闘しています。インドネシアでは外国企業が土地を所有することが可能なため、Dari Kが現地に自社農園を所有することもできるのですが、あえて契約農家制を採用しています。なぜDari Kは契約農家制にこだわるのでしょうか?

 

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―そもそも、自社農園と契約農家って何が違うのですか?

 

吉野:簡単に言うと、企業が土地を所有し、小作人を雇うのが自社農園で、各農家が自身で土地を所有し、彼らが栽培した農作物を企業が購入するというのが契約農家制です。

 

―なるほど。自社農園のメリットって何ですか?

 

吉野:自社農園は土地の所有権が企業にあるので、企業の好きなようにできるのがメリットだと思います。たとえば、Dari Kはアグロフォレストリー農法を採用していますが、約500軒の契約農家さんの元へ1軒1軒回り、アグロフォレストリー農法を説明したり、アグロフォレストリー農法を採用してほしいとお願いしたりするのは大変な労力がかかります。自社農園であれば「アグロフォレストリー農法を採用します」と一度伝えれば済みますよね。

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―たしかに。では、Dari Kはなぜ契約農家制を採用しているのでしょうか?

 

吉野:そもそも私がDari Kを創業したのは、歴史的な背景からカカオ農家が儲かりにくい構造になっていることに対して疑問を持ち、カカオ農家の努力がきちんと報われるようにしたいと思ったからです。カカオ農家が頑張っても頑張らなくても、カカオの買取価格は国際市場で決められてしまうため、出会った当初のインドネシア・スラウェシ島のカカオは品質が低かったのです。そこで、カカオの品質を上げてそれに見合う買取価格で買い取る仕組みをDari Kが独自でつくることで、カカオ農家の努力が収入という目に見える形できちんと報われるようにしています。Dari Kがスラウェシ島の農家と出会った時、彼らは自分の土地を持ち、農業を営んでいたのですが、「カカオ農家の努力が報われるようにする」という目標を達成するためにわざわざ自社農園をつくる必要はないと感じましたし、自社農園だと雇用者(Dari K)と被雇用者(農家)の主従関係が出てきてしまいます。一人ひとりの自主性を重んじるためにも契約農家制の方が適していると思いました。

 

―契約農家制だと農家さん一人ひとりが自分で考え、より良いカカオを作ろうと努力するんですね。

 

吉野:そうですね。今Dari Kには約500軒の契約農家がいますが、駐在員が何も言わなくても自分たちで積極的に会合を開き、情報交換をしているようです。たとえば、「こういう風に育てると生産性が上がるよ」「こうすると病害虫が少なくなるよ」といった情報ですね。彼ら同士はライバルですが、共により良いカカオを栽培しようと切磋琢磨する良き仲間でもあるのだと思います。まさにwin-winですね。契約農家だと自分の土地があり、どれだけ手をかけてカカオを育てたかが、カカオの品質やカカオの買取価格という形で目に見える結果として表れます。自分の仕事に誇りを持ちながらも一つの大きなチームとして互いに助け合えるのが、契約農家制の良さだと思います。この良さを活かして、皆で助け合いながらカカオ農家の努力が報われる社会にしていきたいです。

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これまでに公開した「吉野に聞く」シリーズの記事は以下のURLよりご覧いただけます。

【吉野に聞く】なぜカカオ農家は貧困から抜け出しにくい状況にあるのか?(第1回)

【吉野に聞く】フィリピン・ミンダナオにおける事業展開の挑戦(2017年JICAプロジェクト)(第2回)

【吉野に聞く】Dari Kはなぜフルーツ発酵に挑戦するのか(第3回)

【お知らせ】ふるさと納税でDari Kのチョコレートがお楽しみいただけます

All-win Chocolateを目指すDari Kは、2011年3月11日に京都市で設立されました。

 

世界から多くの観光客が集まる京都市では、社会課題をビジネスを通して解決しようとする企業の中から「これからの1000年を紡ぐ企業認定」を行い、認定企業には成長と発展のサポートを行っております。

 

Dari Kは2016年に認定され、京都市の行政からの多大な支援をうけ、地域に深く根差した事業展開を実施してきております。

 

実はあまり知られていないかもしれませんが、Dari Kは「京都市を盛り上げたい」という想いを背景に、2020年からふるさと納税の返礼品として商品を出品しております。

 

定番のカカオサンドクッキーやカシューチョコ、濃厚な味わいが好評のチョコレートアイスクリームを取り揃えております。

 

今年度のふるさと納税をお済みで無い方は、ぜひ返礼品でDari Kのチョコレート商品をお楽しみください。

 

お取り扱いサイトは以下の通りです。

 

「ダリケー」や「Dari K」と検索していただくと該当商品の閲覧が可能です。

 

・ふるさとチョイス: https://onl.tw/yDnChfc

・ANAのふるさと納税:https://onl.tw/61hSPDY

・楽天ふるさと納税: https://onl.tw/bnvD63B

・ふるなび: https://onl.tw/YjWTgLF

 

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【吉野に聞く】Dari Kはなぜフルーツ発酵に挑戦するのか(第3回)

2021年1月から販売開始した、人気商品の「カカオが香る生チョコレート~フルーツ発酵~」。副原料や香料を一切入れていないのにフルーツがふわっと香る「フルーツ発酵」の技術は、Dari Kが独自で開発しました。今回はその裏側にあるストーリーを深掘りしていきます。

 

*フルーツ発酵とは?

カカオ豆の発酵の過程で現地で採れる南国の果物を使用して作った特別な酵母を混ぜることで、フルーツの風味や香りをカカオ豆そのものにまとわせた特別なカカオ豆のことです。

 

◆そもそも発酵って?

 

―そもそもカカオを発酵させるということ自体、あまりイメージがつかないのですが、カカオの発酵について教えてください。

 

カカオ豆というのは、カカオポッドと呼ばれるカカオの果実の種子のことを指します。カカオポッドは、ラグビーボールより一回りくらい小さい楕円形の実で、これがカカオの木の枝や幹に直接ついています。

 

 

このカカオポッドを収穫して殻を割り、中からパルプと呼ばれる白い果肉を取り出します。

 

 

このパルプを木箱に入れ、バナナの葉っぱで蓋をして放置すると、パルプの糖分と目には見えない酵母が反応して温度がぐんぐん上がっていきます。これがカカオの「発酵」です。

 

 

発酵によって、カカオのパルプの甘酸っぱい香りや味がカカオ豆の中に染み込みます。発酵しなくてもカカオ豆からチョコレートを作ることはできますが、発酵したカカオ豆からできたチョコレートに比べて味が単調で、あまり美味しくなりません。美味しいチョコレートを作るには、良い原料を使う必要がありますが、そのためには発酵という過程は不可欠です。

 

―発酵することで風味の良いカカオ豆になるのですね!

 

はい。カカオ豆は産地によって色々な風味の違いがありますが、その風味を決めるのも「発酵」なのです。

 

◆フルーツ発酵の開発秘話

 

※写真はイメージです

 

―カカオを発酵させる際にフルーツも加えたのですね。どんなところが大変でしたか?

 

そもそも、カカオ豆の発酵で作用する酵母は木箱やバナナの葉っぱ、空気、土などどこにでもいて、何の酵母が作用してこの風味になっているのか、科学的によく分かっていない部分も多くあります。そこにフルーツも加えて発酵させようとするわけですから、一度上手くいったとしても、一緒に入れたフルーツの酵母が作用してこの風味になったのか、それとも木箱にたまたまいた酵母が作用したのか分からず、もう一度同じ原料で同じ条件で実験しても、違う風味になってしまうことがあり、条件を揃えるのに苦労しました。

 

ーフルーツ発酵を開発するのに、どれくらいかかりましたか?

 

5年かかりました。

 

―5年も!なぜそんなに時間がかかったのですか?

 

同じような風味を作り続ける(再現性を持たせる)のに一番苦労しました。

 

―同じ条件で実験しても、風味が全然変わってしまうこともあるのですね。どうやって同じ風味を出し続けられるようにしたのですか?

 

木箱ではなくステンレスの発酵槽を使い、実験が終わるたびに消毒して使うようにしました。ステンレスであれば酵母もくっついていないですし、比較的同じ条件を作り出しやすくなります。ステンレスの発酵槽は売っていなかったので、自分たちでステンレス板を買って手作りしました。

 

◆フルーツ発酵の可能性と今後の挑戦

 

 

―フルーツ発酵って、カカオ豆をチョコレートにする段階でフルーツのフレーバー(香料)を足すのと何が一番違うのですか?

 

一番は、いつ誰がフルーツの風味を加えるという付加価値を加えるかが違います。カカオ農家はこれまで、カカオを収穫・発酵・乾燥させ、輸出するだけで、フレーバーを足すことを含めたチョコレートへの加工は生産国ではない国(先進国など)で行われることがほとんどでした。カカオは国際市場で買取価格が決められてしまうため、原価割れを引き起こす可能性のある作物です。カカオ農家が自分たちで価格を決めることができず、カカオ農家が儲かりにくい構造にあります。フルーツ発酵は、そんな生産者たちが自分たちでフルーツの風味という付加価値を加えられることで、国際市場で取引されるカカオ豆と差別化を図れますし、付加価値を加えることによってカカオの買取価格も上がります。フルーツ発酵はカカオ農家にとって、カカオが儲かりにくいという状況から脱却し得る一つの希望になるのではないかと思っています。

 

また、消費者にとってもフルーツ発酵はさらにカカオやチョコレートを楽しめることに繋がると思います。Dari Kはインドネシア・スラウェシ島にしか契約農家がいないため、他のBean to Barのように産地の違いでチョコレートの風味の違いを楽しんでいただくことができません。その分、同じスラウェシ島のカカオ豆でもフルーツ発酵の有無によって風味の違いが味わえ、楽しみ方が広がるのではないかと思います。

 

―なるほど。フルーツ発酵に使うフルーツってどこから仕入れているのですか?

 

スラウェシ島の農家がアグロフォレストリー農法で育てているフルーツを使うなど、スラウェシ島で採れたフルーツを使っています。カカオは直射日光に弱く、カカオの木よりも背の高い、日陰を作ってくれるシェードツリーが必要になってきます。また、カカオの木が病気にかかり、カカオを収穫できなくなったとしてもフルーツの木を混植しておけば農家は食いつなぐことができます。アグロフォレストリー農法で色々な作物を植えておけば現地の生態系を守ることにもつながり、環境面から見ても良い農法なんです。

 

 

こうしたメリットがある一方、スラウェシ島の島民は皆カカオやフルーツを栽培していて、収穫したフルーツを市場に持って行っても売れません。漁師に魚を買ってくれと言っているようなものですからね。いくら環境やカカオの生育のために良いからといって、売れないフルーツを作り続けるのは無理があります。そこで、アグロフォレストリー農法で育ったフルーツをカカオの発酵に混ぜ込むことで、フルーツを栽培する意義が生まれます。農家の経営を持続可能にするためにも、フルーツ発酵には可能性があるのではないかと思います。

 

―最後に、フルーツ発酵を通して今後どんなことに挑戦していきたいですか?

 

スラウェシ島にかぎらず、もっと色々な場所でフルーツ発酵の技術を広めたいです。カカオだけを発酵させても産地によって風味が全然違うのに、中米やアフリカなど、現地で採れるフルーツを現地のカカオと掛けあわせたらもっとカカオに個性が生まれると思いますし、カカオの楽しみ方がぐっと広がると思います。世界のカカオの可能性を広げていきたいですね。

【催事情報】銀座 蔦屋書店でお取り扱いいただきます

銀座 蔦屋書店にて開催される「京都のものづくりーKYOTO another storyー 京都まるしぇ」でDari Kの商品をお取り扱いいただきます。
10月29日(金)から11月2日(水・祝)までの催事となります。

京都まるしぇ_ロゴ

お近くにお越しの際はぜひお立ち寄りください。

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*催事名:「京都のものづくりーKYOTO another storyー 京都まるしぇ」

 

*日程:2021年10月29日(金)~11月3日(水・祝)

 

*場所:銀座 蔦屋書店

東京都中央区銀座6丁目10-1 GINZA SIX 6F

 

*公式サイト:https://store.tsite.jp/ginza/event/art/22803-1850081012.html
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【商品情報】CLAIR DE LUNEでお取り扱いいただきます

1945年創業の老舗和菓子屋「小泉製菓」(愛媛県)が運営するカフェ「CLAIR DE LUNE」(クレアドルネ)にて、Dari Kの商品をお取り扱いいただいております。

 

 

店内ではDari Kの商品のほか、さまざまなスイーツがお楽しみいただけます。お近くにお越しの際はぜひお立ち寄りください。

 

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*カフェ:CLAIR DE LUNE

 

*場所:愛媛県東温市志津川1750-1

 

*商品:カカオサンドクッキー、カカオが香る生チョコレート2021~フルーツ発酵~

 

*公式サイト:https://clairdelune-sweets-cafe.com/

 

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colorful coffeeで搾りたてカカオマスのプレミアムテリーヌショコラを提供

三重県津市のスペシャルティーコーヒー専門店「colorful coffee(カラフルコーヒー)」で、搾りたてカカオマスをふんだんに使用した「搾りたてカカオマスのプレミアムテリーヌショコラ」が提供されています。

テリーヌショコラ

 

カカオの風味をしっかりと感じていただける、なめらかな舌ざわりのテリーヌショコラです。

付け合わせにはチョコレートと相性の良い、季節の食材が添えられています。

 

ぜひ一度ご賞味ください。

 

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*商品:搾りたてカカオマスのプレミアムテリーヌショコラ

 

*提供期間:常時(付け合わせはシーズナル)

 

*提供場所:colorful coffee

三重県津市安東町1378-4

 

*価格:800円(原材料により変更有)

 

【吉野に聞く】フィリピン・ミンダナオにおける事業展開の挑戦(2017年JICAプロジェクト)(第2回)

2011年の創業以来、Dari Kはインドネシア・スラウェシ島でカカオ豆の栽培指導を行っていますが、JICAプロジェクトの一環で、フィリピン・ミンダナオでの事業展開の可能性を模索していた時期があります。結果として、ミンダナオでの事業展開に至らなかったものの、なぜDari Kがミンダナオでの事業展開を試みたのか、まとめました。なお、本案件は開発コンサルティング企業と協同で実施したJICAプロジェクトです。

※大学生の方から「『BOPビジネス』をテーマにした卒業論文を執筆したい。そのために話を聞きたい」といったお問合せを2021年現在も度々いただいています。今回の記事は、お問合せいただいた大学生の方と、当時プロジェクトを主導していた代表の吉野のインタビューの内容を元に執筆したものです。

フィリピン(1)

◆Dari Kがなぜフィリピンで事業を行おうとしたのか?

 

ミンダナオは古くから紛争状態が続いており、現地で暮らす人々が安心して仕事ができる環境下にありません。貧困状態に苦しむ人であふれる中、高品質なカカオ豆を継続的に栽培できるようにすることで安定した収入が得られるようにできるのではないか。加えて、ミンダナオはインドネシア・スラウェシ島のすぐ北に位置し、地理的に見ても近いことやカカオ豆の栽培率が各国の約8割を占め、どちらの地もカカオ豆の栽培に適していたことなど、スラウェシ島との共通点も多く見受けられたため、「BOPビジネス」としてミンダナオでの事業展開の可能性を検討することとなりました。

 

◆そもそも「BOPビジネス」って何?

 

「BOP」とは、Base of PyramidまたはBottom of Pyramidの略で、購買力平価で年間所得が3000米ドル(約33万円)未満の層が該当します。年間約33万円というと、1日900円ほど。1日900円では、衣食住や子供の教育費を確保するのが困難であることは、想像に難くありません。BOPビジネスは、そんなBOP層を対象とした持続可能なビジネスのことです。

 

BOPビジネスには大きく分けて2種類あります。1つは、BOP層を消費者と捉え、彼らのニーズに合わせた商品を開発・販売するビジネス。たとえば、日本の食品会社である味の素が、小袋の「味の素」を途上国で販売する事例が挙げられます。小袋の「味の素」の価格は、インドネシアでは0.9グラム入り50ルピア(約0.5円)、ナイジェリアでは9グラム入り5ナイラ(約3円)。まとまったお金がないためにこれまで味の素を購入できなかった現地の人々にとって、少額であれば手が届きやすいためです。

 

もう1つのBOPビジネスは、BOP層を消費者と捉えるのではなく、BOP層の雇用を創出することで彼らの所得を増やす方法です。Dari Kはこの意味合いでのBOPビジネスを進めてきました。たとえばミンダナオの人々は長年紛争状態に苦しみ、所得水準が著しく低いのが現状です。まず彼らが安心して働けるよう仕事をつくることが、貧困から脱却する第一歩になります。

 

雇用を創出することでBOP層が貧困から脱却する第一歩につながったとしても、いきなり日本で出回っているような通常サイズの「味の素」が買えるようになるわけではありません。どちらのBOPビジネスが良い、悪い、という話ではなく、企業の役割分担だったり、上手く組み合わせたりすることが重要なのではないかと思われます。

 

◆ミンダナオのJICAプロジェクト

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ミンダナオのJICAプロジェクトでは、「カカオ栽培及び収穫後処理の指導により、高品質なカカオ豆が生産できるようになり、ミンダナオ産カカオが国内外問わず高品質カカオとして流通する」ことをプロジェクト目標に、長期的には現地住民がカカオの栽培により生計向上・雇用創出を実現し、経済の安定に貢献する目的で進められました。Dari Kだけでなく、開発コンサルティング企業やJICAと共にプロジェクトを進めました。

 

JICAといった公的機関とプロジェクトを共にするメリットとして挙げられるのが、G2G(Government to Government)のネットワークを存分に活かせるということ。一企業が、進出したことのない国でビジネスを始めるのは想像以上に大変です。国の後ろ盾があることで話が早く進んだり、現地の情報を得やすくなったりと、様々なメリットがあります。

 

◆現地の貧困問題に対して、民間企業が取り組む意義

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BOPビジネスにおいて、民間企業ならではの強みを発揮できる部分があります。それは、「マーケットを知っていること」「売れる商品をつくるにはどうしたらいいか、知っていること」です。売れる商品というのは、品質だけでなく、消費者のニーズに合っているか、値段設定は的確か、など様々な観点から考える必要があります。現地の人々の雇用創出を図っても、消費者にとって魅力的な商品でなければ買ってもらえません。商品を買ってもらえなければ、最終的に現地の人々が再び仕事を失うことになる可能性が高まります。ただ現地の雇用を創出すればいいのではなく、消費者目線に立つことも必要となります。

 

ミンダナオの事業を例に挙げると、農家が一番気にするのは、「高品質なカカオ豆を栽培したところで、本当にそれが売れるのか?マーケットはあるのか?」ということ。その疑問にこたえられ、かつビジネスパートナーとして彼らと共に歩いていく役割を担えるのは、民間企業だけではないでしょうか。そこに、現地の貧困問題に対して、民間企業が取り組む意義があるといえます。

 

◆紛争の影響から、ミンダナオでの事業展開は一旦見送ることに

 

結果として、ミンダナオの紛争状態が悪化し、外務省から渡航中止命令が出ていたことからミンダナオでの事業展開は見送らざるを得ませんでした。現在、Dari Kが技術指導を行うインドネシアでは、現地の駐在員が農家を一軒一軒回り、高品質なカカオ豆をつくるべく尽力しています。駐在はおろか渡航もままならないミンダナオで、カカオ豆の栽培の技術指導を行うことは困難です。仮に遠隔での技術指導によって高品質なカカオ豆の栽培に成功したとしても、現地に買い付けに行けなければせっかくできたカカオ豆やそれまでの農家の努力がすべて無駄になってしまいます。

 

こうした理由からミンダナオでの事業展開は見送ったものの、Dari Kとしてはこれで終わらせるつもりはなく、ミンダナオでも高品質なカカオ豆を栽培できるよう、再挑戦したいと考えています。いつの日かフィリピン・ミンダナオ産のDari Kのチョコレートを皆さんに味わっていただける日がくるかもしれません。

◆ご参考◆

 

本プロジェクトについて、より詳しく知りたい方は、以下ご参照ください。

 

JICAプロジェクト報告書「フィリピン国 ミンダナオにおけるカカオ生産性向上ならびに高付加価値化に関する案件化調査業務完了報告書

 

弊社代表・吉野のブログ「ミンダナオ出張記(1)」「ミンダナオ出張記(2)」「ミンダナオ出張記(3)

【セミナー報告】GRIPSフォーラムでの吉野の講演が終了しました

10月11日に、政策研究大学院大学(GRIPS)で開催された「GRIPSフォーラム」が無事に終了しました。300名を超える多くの方から事前にお申し込みいただき、盛況となりました。

 

英語での開催であったため、日本だけでなく米国やインドネシア、フィリピンなど外国籍の方の参加も多く、また中学生から社会人、定年退職された方まで、幅広い世代の方にご参加いただいたようです。

 

参加者の皆様は、カカオをめぐる構造上の問題やDari Kを設立した経緯についての関心が高かったようで、コメントが多く寄せられました。外国籍の方から「自分の母国でもビジネスを立ち上げてほしい」といった嬉しいコメントもいただきました。

 

ご参加くださった皆様、そしてこのような機会をくださったGRIPSのご関係者の方に、この場を借りて御礼申し上げます。

講演依頼についてはお問い合わせフォームより承っております。

なお、スケジュールの都合からすべての講演依頼にお応えできない場合がございます。あらかじめご了承ください。

 

【セミナー報告】亜細亜大学での吉野の講演が終了しました

10月11日に、亜細亜大学の学生向けに開催された「インターナショナル・フォーラム」が無事に終了し、60名を超える亜細亜大学の学生の方にご参加いただきました。

 

今回は学生向けということで、吉野がなぜDari Kを創業することを決意したのか、吉野の学生時代の話が中心に進んでいきました。

 

「なぜ日本は地理的に近いインドネシアではなく、ガーナからカカオ豆を多く輸入しているのか」という吉野からの質問に対し、学生の方が積極的に考え、意見を発表してくれました。疑問をただの疑問で終わらせるのではなく、なぜそうなのか自分なりの仮説を多く立てることが大事だという吉野からの話があったり、質疑応答の時間では学生の方から「なぜ京都で起業したのですか」「なぜチョコレート業界のことを全く知らなかったのに自分でやろうと思ったのですか」といった質問が次々と挙がり、吉野が「良い質問ですね」を連発したりと、Zoom開催でありながらも盛り上がった講演となりました。

 

ご参加くださった皆様、そしてこのような機会をくださった亜細亜大学のご関係者の方に、この場を借りて御礼申し上げます。

講演依頼についてはお問い合わせフォームより承っております。

なお、スケジュールの都合からすべての講演依頼にお応えできない場合がございます。あらかじめご了承ください。