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dari K to the World
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CES@ラスベガス訪問記③

CESに行っていろいろ考えた。その中でも、特に日本と世界の隔たりを感じたのは「サステナビリティ」に関する認識だ。Dari KはSDGsが制定される前からSDGsの目標を見据えた活動をしてきた。だからSDGsの先進事例、とりわけ中小企業の中ではSDGsの代表的なケースとして多くの賞をいただいたり取材をしていただいてきた。

それはそれでありがたいのだけれど、どうも個人的に腑に落ちないのは、世の中では、SDGsの取り組みは「本業」に対して「+α(アルファ)」という認識があまりに強いということ。CSRの延長線上にSDGsの取り組みを位置付けることももちろんできるけど(おそらく企業のCSR部門がSDGsの取り組みを担当している事情もあると思う)「CSR=SDGs=ESG」ではなく「CSR≒SDGs≒ESG」だし、むしろ「ESG→SDGs→CSV」だと思っている。

ここは語りだすと長くなるので話を戻すと、今年のCESではImpossible FoodsがImpossible burger 2.0 というのを発表してメディアの話題をさらった。

インポッシブルフーズ?インポッシブルバーガー?「え、なんのこと?不可能な食品?食べれないハンバーガー?」と思われる人もいるかもしれない。だとしたら、これこそが日本の現状と世界のトレンドの隔たりの最たるものだと思う。

Impossible FoodsやBeyond Meatと聞いて「代替肉の会社」とピンと来たら、世界の食品業界の流れを追えているといえる。これらのベンチャー(まだ設立から10年程度しか経っていない)は数年前から大きな注目を集め、今やアメリカでは知らない人はいないくらい有名な企業だ(と思う)。代替肉とは、大豆をはじめとして植物由来の素材を使用しながら、分子レベルで本物の肉の味や触感を再現した人口肉のこと。その代表的な企業がこの2つというわけだ。

Beyond Meatは既に上場しているが、売上は円ベースで2018年の実績は100億円未満、営業損失は30億円(つまり赤字)。売上も小さいし、利益は出ていないどころか大赤字にも関わらず、なんとその時価総額は7,000億円を超えている。一方のImpossible Foodsは未上場ながら当然ユニコーン(時価総額10億ドル以上約1000億円以上)で、既に2000億円をゆうに超える評価がついている。

ちなみに、代替肉ではなく日本の(本当の)食肉の最大手の日本ハムの売上は1兆円を超えており、経常利益は約300億円。そして今の時価総額は約5,000億円。2位の伊藤ハムの売上は約8,000億円、経常利益約200億円で時価総額は2,000億円。こうしてみると、代替肉メーカーの成長がどれほど株式市場で期待されているか、あるいは見込まれているか分かるだろう。

私も以前サンフランシスコでインポッシブル・バーガーを食べたが、肉汁滴るハンバーガーは、代替肉と言われなければ本当の(普通の)肉を食べていると間違うくらいのクオリティだった。そして今、海外ではマクドナルドやバーガーキングなど大手ファーストフード、外食チェーンで代替肉の導入がとんでもないスピードで広まっている。今回のCESでは、今まで代替肉というと牛肉が多かったが、Impossible Foodsが、豚肉バージョンを発表して話題になっていた。

これほど代替肉が注目を浴びる背景として、「植物由来でカロリー控えめの方がいいよね」とか「ベジタリアンも食べれるからマーケットが広がるよね」とか、「牛肉食べないヒンズー教徒や豚肉食べないイスラム教徒の需要を取り込めるね」といったロジックも無いわけではない。

また、これは帰国してから色々リサーチしていて分かったことだが、中国では2019年下期にアフリカ豚コレラ(ASF)の感染拡大による供給減少の影響で、豚肉の値段が倍近くになっていた模様。それもあり、家畜の感染症などに影響を受けない代替肉が一層注目されていた節もあるかもしれない。

しかし、これらの理由だけで上述のバリュエーションを正当化するにはいささか短絡的過ぎる。これほど代替肉の市場拡大が期待されているのは、なぜなのだろうか?

ここで冒頭の「サステナビリティ」が出てくる。代替肉が既存のリアルな肉のマーケットシェアを奪い、かつこれまで肉を食べなかったベジタリアンや宗教的に制約があった人の分もマーケットが広がるというのは確かにその通り。しかし、より根本的には、リアルな肉の過剰摂取は健康に良くないという医学的根拠があったり、畜産業で排出される温室効果ガスは、車などの交通機関から排出される量を上回っていて気候変動を助長しているという事実がある。さらには、畜産のために森林が伐採され、牛や豚の飼料として大量の水や穀物が必要とされることによる環境負荷の増大や資源の非効率的利用という現実もある。一言でいえば、リアルな肉は、人間の健康面でも、地球環境への負荷という点においても、サステナブルではないということだ。

折しも2020年に入って、世界最大の資産運用会社である米ブラックロック(7兆ドル、800兆円弱を運用)は、気候変動へのコミット強化を誓った。気候変動の緩和策や適応策を講じる企業に積極的に投資をすることが明らかになったわけだ。そして同社の運用資産から5億ドルを超える石炭関連株を放出すると発表した。つまり、サステナブルな社会を作るために世界で最もインパクトのある機関投資家が動くというのだ。

先般のダボス会議でも「気候変動」を大きく取り上げていたのは記憶に新しい。世界は気候変動対策や持続可能性の担保に最大の関心を払っている。当然ESG(Environment, Social, Governance)投資の流れは止まらないし、それどころか今後加速していくことは確実だ。その意味で代替肉は、ベジタリアンも食べれるから人気になるはずだとかいう次元ではなく、気候変動対策としても、あるいはサステナブルな未来を実現するためにも、広がらなくてはならない”must”なトレンドなのだ。

こんな感じで、たった数日の滞在ではあったが、初めてのCES@ラスベガスでは非常に多くのことを考えさせられた。ただ、CES会場で最も印象に残っているものは何かと言われれば、ソニーが発表したEVコンセプトカーを前に、日本のサラリーマンが「うわー、この車かっこいいなー」と言いながら写真を撮っていたことだ(確かに本当にかっこいいんだけど)。そして、その車の前で記念撮影をするための列のほとんどが日本のサラリーマンだったこと。厚切りジェイソンばりに「Why Japanese People!!!」って叫びそうになったわ。大丈夫か、ニッポン!?

終わり。