冬ギフトに!濃厚カカオのテリーヌショコラ

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Dari Kチョコのおいしさの秘密3つを大公開!②

前回のDari Kチョコのおいしさの秘密3つを大公開!①では、「チョコの主原料であるカカオ豆は、Dari Kにとって調達対象ではなく自社の加工対象である。それゆえ、カカオ豆のもつポテンシャル(可能性)を拓くことができる」という原料の話をしました。

おいしさの秘密②は、「決まった作り方はない。その時のカカオ豆によって作り方は大きく変わる」ということで、今回は製造・加工の話になります。

カカオ豆からチョコレートを作るには、大きく分けると

・カカオ豆の焙煎(roasting)

・皮(ハスク)の除去(winnowing)

・カカオ豆のペースト化(refining)

・副原料(砂糖など)と混ぜて練り上げる(conching)

・カカオの油の結晶の安定化(tempering)

という工程があります。

チョコ好きな方でも、この辺のことはあまり知らないかもしれません。というのも、コーヒーと違い、カカオ豆自体が一般に流通していないので、コーヒー好きな人の中には、コーヒーの生豆あるいは焙煎された豆を買ってきて、自宅でコーヒーを焙煎したり、挽く・淹れる人は少なくないですが、いくらチョコ好きでも、自宅でカカオ豆から毎回チョコ作ってる、って人はほとんどいないですよね。

さて、さらに突っ込んでお話しすると、上記のチョコレート製造の工程に関して、実はチョコレートの作り手には多くの選択肢が与えられています。

例えば、

・カカオ豆の焙煎プロファイルは何℃で何分?

・ハスクの除去は手で行うか、機械を使うか?機械で行う場合は胚芽は取る?取らない?

・カカオ豆のペースト化に何時間かける?何ミクロンまでやる?

・副原料の砂糖は何を使う?(サトウキビ由来?ビート/サトウダイコン由来?マルチトール?その他?)

・テンパリングはオート?マニュアル?

などです。

そして、ここからは超マニアックな世界ですが、上記に加え、クラフトチョコレートメーカーはさらに多くの選択肢があるんです。

例えば、

・焙煎前にカカオ豆を洗浄する?しない?(するなら水、お湯?スチーム?)

・リファイニングやコンチングにはどんな機械を使う?(メランジャー?石臼?ボールミル?ユニバーサル(リファイナーコンチェ)?)

・コンチング中に空気との接触はさせる?させない?(させる場合、どれくらいさせる?どうやってさせる?)

・最後の粒子サイズのターゲットは何ミクロン?

・追油はする?しない?(するならカカオバター?代用油脂?何%いれる?)

・乳化剤は使用する?しない?(するなら何由来のものを使う?)

で、それぞれの選択には、その理由があります。たとえば「焙煎前に生カカオ豆を洗浄したほうが出したい味になるけど(あるいは菌数を減らせるけど)、時間がかかりすぎるのでやらない」とか、「今回の豆はこういう味にしたいので、水ではなくお湯で洗浄する」とか、「味はこういうのがいいので洗いたくはないけど菌数を減らすためにUV殺菌をかける」とか。

結論を先に言っておきますが、正解はないです。例えば、野菜を、生でサラダにしようが、野菜炒めにしようが、蒸し野菜にしようが、BBQで焼き野菜にしようが、あるいは茹でてテリーヌにしようが、どれが正解ということはないのと同じで、カカオ豆をどのように加工しようと正解も不正解もありません。

しかし、製造工程において、どういう選択をするとどういう味になるというのを、分かっているのと分かっていないのでは、カカオの魅力をどれだけ引き出せるかに差がでてきます。たとえば、上の野菜の例でいえば、柔らかく甘みが強いカブは生で食べたり蒸したりしてそのまま食べてても良いだろうけど、ちょっと収穫が遅くなって繊維が気になるカブは茹でて裏ごしするのが良いかもしれません。原料の状態と各加工方法のできること・できないことが分かっていれば、原料の味をベストに引き出すことができるのです。

ちょっと話はそれますが、数年前、私はボールミルでカカオ豆からチョコレートを作ったことがありました。数時間ボールミルを回し続け、ようやく出来上がったと思い興奮して味見をすると、とにかく鼻を衝く強烈な匂いと言葉では表しがたい渋さがひどく、大失敗だと思ったことがあります。しかし、せっかく作ったからと捨てずに保管しておいたら、数か月後にスタッフがこれを見つけてきました。是非食べてみたいと言うので、いたずら半分に私からは何も説明せずに、食べさせました。すると、社員が悶絶しだしました。

失敗作が時を経て、さらにヤバくなったかと思いながら私はスタッフを見ていると、なんとそのスタッフは「こんな美味しいチョコ食べたことない!」と言って悶絶していたのです!私も恐る恐る食べてみると、味がまろやかになり、それでいて極上の酸味と渋みと苦みと甘みのバランスが取れた最高のチョコになっていました!

しかし、ボールミルではなく、他の機械を使って全く同じレシピで作ったチョコは、数カ月寝かせても全然美味しくならないどころか、むしろ出来立ての時の華やかな香りは日に日に弱まり、何の感動もないチョコになってしまったこともあります。

この例からも、ある製法がベストという唯一絶対的な正解があるわけではなく、すぐ食べるならこの製法、数か月後に食べるならあの製法というように、おいしさを追及するにはすべての工程において選択肢を吟味し、使い分けていかなければならないことが分かりますね。

さて、話を戻して、ダリケーの看板商品は2011年の設立以来一貫して、トリュフ・生チョコになります。ややテクニカルになりますが、トリュフや生チョコは水分量の多いガナッシュと呼ばれ、乳化状態的には水中油型です。一方、板チョコ(タブレット)は油中水型であり、どちらもチョコレートには変わりはないですが、組成がそもそも異なります。

ここで興味深いのは、科学的に、あるいは物理的に言えば、板チョコに生クリームを混ぜれば水分活性の高いガナッシュを作ることができます。あくまで「ガナッシュを作る」のが目的であれば、これで問題ないのですが、もし目的が「カカオの香りが出来るだけ強い(カカオの個性を最大限引き出す)ガナッシュを作る」のであれば、板チョコ・タブレット・クーベルチュールを使わないほうが良いのです。なぜなら、タブレットを製造するにはカカオマスに砂糖を混ぜてコンチングされているからであり、そのコンチングの過程で良くも悪くも香りは落ち着いてしまうからです(外気への放出があればなおさら)。

だから、ダリケーが本気で香り高いトリュフを作る場合は、たとえ自家製であったとしてもクーベルチュールを使わずカカオマスから作ります。もっといえば、カカオマスも、作り置きはせず、挽きたてのものを使います。ここまでこだわると、そもそも数を沢山つくるのは非常に難しくなります。むしろ、とんでもなく小ロットにならざるを得ないのが実際のところです。

正直お話しすると、ダリケーのすべての商品がthe very best(出来得る限りの最善のもの)ではありません。The very bestを目指すと、小ロットですべて手作業なので価格が飛躍的に高くなるだけでなく、賞味期限が極端に短くなったり、保存条件が非常に厳しくなったりと制約がびっくりするくらい多くなるからです。

1時間に1個しかできないthe very bestの100点のチョコと、1時間に100個できる80点のチョコを考えたときに、前者の価格は後者の100倍になるけど、それでも買う人がいるかと考えると、そもそも味は主観であるという大前提もあるし、日本においてそこまでチョコレートに価値を置く人がどこまでいるだろうという疑問もあるので、ビジネス的には後者を選ばざるを得ないというのが実際のところです。

実は、ダリケー社内でいつも大議論になるのは、「僕らはthe very bestのチョコを作りたいのか?それとも、生産者を含めたwin-winなチョコレートを広めたいのか?」ということ。The very best はThe very bestゆえに多くを生産できず、そうすると多くのカカオ農家からカカオ豆を仕入れることができなくなる。僕らにとってのプライオリティ(優先順位の高いもの)は後者だけど、前者をテクニカルにはできるのに実際はそれを商品として出せていないモヤモヤが常にあるのです。

前回同様、徒然なるままに書いていると話がそれてしまうので、ここでまた話を戻しますが、何を言いたいかというと、いろいろ制約はあるにせよ、Dari Kは上記のように様々な製造工程上の選択肢を理解しています。あまりに奥が深い分野なので、知り尽くしているとまでは言えませんが、相当程度の知見を持っているのは紛れもない事実。

チョコレートの原料カカオ豆は果物の種である以上、同じ産地であっても、同じ発酵方法であっても、毎年収穫期ごとに味は微妙に異なります。その全く同じものがない一期一会のカカオ豆の個性を、どういう製法でどう加工すれば最大限に引き出せるか、私たちは日々カカオ豆と向き合いながら考えているのです。

「決まった作り方はない。製法はその時のカカオ豆によって作り方は大きく変わる」つまり、決まったレシピや決まった製法がないということは、2つと同じカカオ豆がないからこそ、唯一絶対的な万能な製法は存在せず、それぞれのカカオの魅力を最大限引き出すために、その都度ベストな製法を選んでいる証拠とも言えます。

以上がDari Kのチョコのおいしさの秘密2つ目でした。

次回、おいしさの秘密③が最終回となります。内容がマニアックすぎて、読んでくれる人がいるのか不安になってきたけど、書きます(笑)。

*ちなみに、これをオモシロイと思った稀有な方は、約1年前に書いた「○○産カカオ」から「○○さんカカオ」への挑戦も楽しめると思うので、是非ご覧ください!