5月も今日が最終日ですね。私は今、カカオの収穫時期のため、産地であるインドネシアのスラウェシ島に来ています。
日本では今、セブン-イレブンさんやナチュラルローソンさんでDari Kのチョコレート・ドリンクを販売していますが、皆様既にお楽しみいただけましたでしょうか?
実は上記は、Dari Kが手掛けるチョコレート・ドリンクの第2弾になりまして、今年の1月後半から4月上旬までは、下記の第1弾を全国のセブン-イレブンさんで販売させていただいておりました。
1~4月にチョコ・ドリンク2種を販売し、5月には新たなチョコ・ドリンク2種を販売開始。最近、チョコレートそのものの販売ではなく、なぜチョコ・ドリンクを推しているのかと聞かれることが増えてきたので、その理由をこちらに綴っていきたいと思います。
そもそも論になりますが、カカオって言わずもがなチョコレートの主原料ですよね。「チョコレート=カカオ」であり、「カカオ=チョコレート」という図式が無意識でも頭の中に浮かぶ人も多いのではないでしょうか?
しかしながら、カカオがチョコレートとして、つまりお菓子として食べられるようになったのは19世紀半ば以降のこと。一方で、カカオはその遥かずっと昔から消費されてきました。それこそ3,000年以上も前から食されてきたと言われています。つまり、カカオがチョコレートの原料として認識されるようになったのは歴史的にみればまだ200年も経っていないともいえるわけです。
でも、チョコレートではないとすると、一体カカオはどうやって食されてきたのでしょうか?
その答えは、「飲み物」として消費されてきたのです。
チョコレートの製造工程と途中までは同じで、カカオの豆を炒って、石で砕き、薄皮を取り除き、中の豆をすり潰します。粉状あるいはペーストに近い状態まですり潰して、それを水に溶かして飲まれていたといわれています。まさに飲料としての「カカオドリンク」だったんです。
カカオの学名「テオブロマ・カカオ」のテオブロマは古代ギリシャ語で「神様の食べ物」を意味しますが、その言葉のとおり、中米では神へ捧げるものとしてカカオを潰して水に溶いたこのカカオドリンクをお供えしたり、また当時の王族たちは、このカカオドリンクを滋養強壮のため、あるいは薬として飲んでいました。そしてそれからも19世紀半ばまでカカオは主にドリンクとして消費されてきたのです。長いカカオの歴史で見れば、カカオ=チョコレートではなく、「カカオ=ドリンク」だったというわけですね。
話を戻しますが、なぜDari Kとしてチョコレート・ドリンクに力を入れているのか?それは、カカオの飲料としての歴史をリバイバル(再生)したいという個人的な想いもあるのですが、それ以上にシンプルに、カカオの使途を広げたいということがあります。
私はDari Kを設立した2011年当初、つまり今から10年前からずっと、カカオがどうやったら(チョコレートの消費量を増やすだけでなく)もっと日常生活に根付くかを考えてきました。
例えば、小麦ってすごいと思うんです。小麦はパンになったり、スパゲティになったり、うどんになったり、お好み焼きやたこ焼きになったり、あるいはてんぷらやとんかつの衣になったり、ケーキや饅頭になったり、形を変えて私たちの食生活を彩っていますよね。
小麦のように、カカオがもっともっと私たちの暮らしに入り込むことができればどんなに素晴らしいでしょう!まさに小麦が日本人の生活の不可欠なものであるように、カカオもそんな存在になれば、私たちはもっとカカオに関心を抱くだろうし、その関心がカカオの品質はもとより、生産者や農薬、気候、環境などにも向くだろうと思ったのです。
今、カカオはお菓子のチョコレートとして消費されることがほとんど。チョコレートが好きな人は世の中非常に多いですが、毎日チョコを欠かさず食べるという人はそこまで多くないと思います。もちろん、これが欧米であれば、1人あたりのチョコレートの消費量は日本人の3~5倍もあるので、毎日チョコを食べる人も多いのですが、日本はそうではないですよね。
一方で、コーヒーやお茶を毎日少なくとの1杯は飲む人となるとどうでしょう?日本人の9割以上がコーヒーかお茶を毎日1杯は飲むのではないでしょうか?
コーヒーもお茶も、もちろん栄養はあります。でも栄養のためにコーヒーやお茶を飲んでいるという人は少ないですよね?確かにコーヒーもお茶も、カテキンと呼ばれる抗酸化作用を有したポリフェノールを含みますが、カカオはその数倍のポリフェノールを含有しているし、食物繊維やミネラルなども比較にならないほど多く含んでいるため、栄養面でいえばコーヒーやお茶よりも優れているというのは事実です。
栄養素も豊富で味も美味しいのに、カカオが飲料としてあまり飲まれないのはなぜなのか?日本のチョコレート菓子の市場規模は5400億円くらいですが、ココア・チョコレート飲料となると200~300億となり、チョコ菓子の市場規模の20分の1、つまり5%ほどになってしまいます(95%も減少!)。
なぜ人はチョコドリンクを飲まないのか?いつもその疑問が私の頭の片隅にありました。そして2年前、ある仮説にたどり着きました。その仮説とは、「需要がないわけではないが、供給が少ないから市場が広がらない」というものです。
コンビニやスーパーに行ってみてください。お茶は緑茶、麦茶、ほうじ茶、紅茶と沢山種類があり、しかも多くのメーカーが自社商品を出しているので、それこそ20~30種類以上販売されていますよね?しかも、ペットボトルもあれば缶飲料もあり、1リットルや500mlの紙パックもある。コーヒーも同じく、無糖、微糖、カフェラテなど複数種類があり、また形態も缶コーヒーがあり、インスタントコーヒーがあり、カウンタートップのレギュラーコーヒーもある。
チョコレート・ドリンクはどうでしょう?まず、置いてない(笑)。あっても原材料表示を見ると、砂糖が一番初めに書いてあり、多くの場合チョコレートの記載さえない(衝撃!)。つまりチョコ・ドリンクを見かけることはあまりなく、あってもチョコ・ドリンクとは名ばかりで、ココアと香料でチョコ風味にした甘ったるい飲み物(失礼><)しかないんです。
本当のチョコレート・ドリンクが手軽に手に入らないのだから、そりゃチョコレート・ドリンク市場が大きくなるはずがありません。それに、カカオがどんなに栄養素が豊富でも、ドリンクにしたときに使用原料で一番比率の多いのが砂糖であれば、それはカカオの栄養を打ち消してしまいます。
「本当のチョコレート・ドリンクをコンビニやスーパーを通して手軽に買えるようにしたい。そうしたらきっと、カカオはもっと日常に根付くはず!」
そんな想いを抱きながら、昨年2020年の半分以上を、冒頭のチョコレート・ドリンク商品の開発に費やしたのです。
しかし、コンビニなどマス流通向けのチョコレート・ドリンクの開発は予想以上に困難を極めました。そこには、どんな課題があったのか、それをどう乗り越えたのか、それについては明日続きを書きたいと思います。
(つづく)
*Dari Kがコンビニで商品を販売するようになった深い背景はコンビニでの販売に至った理由をあわせてご覧ください!