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dari K to the World
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6勝4敗

私がDari Kを設立する前に投資銀行やヘッジファンドなどの金融業界にいたことをご存知の方も多くいらっしゃると思います。金融時代の先輩や上司は、いろんな意味でぶっ飛んでいてました。

労働時間(もちろん尋常じゃなく長い!)も頭の回転の速さもお金の使い方もとにかくワイルドで驚いたものです。そんな環境に染まる間もなく、3年程度で私は金融業界でのキャリアにピリオドを打ったわけですが、印象の残っていることがあります。それは、数億円の投資判断をする際にビビっていた私が、当時の先輩(今では大成功してシンガポールに移住してしまったのですが)に相談した時のことです。彼は、ごく冷静にこう言いました。

「そんなに悩むことはない。6勝4敗でいいんだ。全勝する必要はない。勝ち越しできればいいんだから。」

投資家の大事なお金を預かっている以上、その資産を減らすことはできないし、当然損失は出したくありません。とはいえ、投資する以上、自分の思惑とは裏腹に損失を出してしまう可能性は避けられないのが事実。だから投資する時に「100%大丈夫」だと思えることはなく、特に今のような混沌として何が起こるか分からない時代はなおさら不安感が拭えないものです。

その先輩に「6勝4敗で勝ち越すことができさえすればそれでいい」と言われても、私の心は晴れませんでした。負けず嫌いだから「1敗もしたくない」というのが本音だったし、全戦全勝したいと本気で思っていたのだと思います。

でもそれは到底無理な話。自分が「この会社は伸びる」と思っていても、既に他の投資家がみなそう思っていたら既に株価は上がっているはずだし、逆に自分だけその会社が伸びると確信があったところで、他の投資家がそれに気づかなければ株価は上がりません。会社が伸びるかどうかというのはもちろん大事だけど、株式投資においては、それと同じくらい、或いはもっと大事なのは、他の投資家がどれほどその会社のことを理解し、またどう考えているかということなのです。

翻って、今チョコレート専門店であるダリケーを経営しているわけですが、アナリストだった頃に全戦全勝を目指していた自分はいつの間にかいなくなっていました。それはチョコレートという食品に携わっているからかもしれません。だって、すべての人が美味しいというものって存在しないのですから。

味は主観だし、そもそも「甘いものが苦手」という人にとっては、それこそ世界のチョコレート品評会で大賞を取ったものであってもきっと美味しいとは思わないだろうし。また人の嗜好は年齢とともに変わるので、同じ人が同じものを食べても、その評価は年々変わる可能性もあります。

そう考えると、「全戦全勝を目指すよりも6勝4敗でもいい、勝ち越すことが大事」と、以前先輩が言っていたように思うようになりました。100人いたら2~3人にだけドンピシャで刺さる、いわゆる「尖った」商品を作る選択肢もないわけではないですが、ことチョコレートに関しては嗜好品ゆえに「尖っている」ことでエッジが利くとは限りません。

とはいえ、9勝1敗、或いは8勝2敗を目指したいかというとそういうわけでもなく、あまりに分かりやすい美味しいチョコというのは、大手メーカーがコンビニやスーパーなどの流通向けに製造している商品と似たものになるので、そこでBean to Bar製法のダリケーが勝負し手も仕方がないわけです。

6勝4敗。「(その価値が)分かる人には分かる」というエッジは効かせつつも、尖りすぎて誰も寄ってこないというわけではない、そんな絶妙なバランスの商品を作っていきたいと思います。何より「勝ち」にこだわるべきは、商品としてのチョコそのものではなく、チョコを通して「世界を変える」という点にあるのですから。