冬ギフトに!濃厚カカオのテリーヌショコラ

dari K to the World
ブログ

新しい取り組みの幕開け

先日のTV放送のお蔭で、これまでDari Kを知らなかった人にもその存在と活動内容を知っていただけたことは本当にありがたいです。(まだご覧になっていない方は https://www.youtube.com/watch?v=fHp8eOBdGYo こちらでご覧いただけます)

あの特集でDari Kは単なるチョコレート屋ではないことはお分かりいただけたと思いますが、TVで紹介していただいた内容ですら、まだまだDari Kの活動の一部に過ぎず、実は現在Dari KではJICA(外務省)、経産省、林野庁など数多くの国家プロジェクトに関わっています。

何度もこのブログでは書いていますが、「何をしているか」という活動そのものも大事ですが、それを伝える・知ってもらうことも非常に大切だと思っています。特にDari Kは美味しいチョコを作って皆さんにお届けし、幸せになってもらうという普通のお菓子屋さんの活動にとどまらず、いかに生産者の人にも自信とやりがいをもってカカオを生産してもらうか、ということも取り組みの核としてやっているので、今回はその後者のことについて少し詳しく書いてみたいと思います。

まあ当然といえば当然ですが、チョコレートは食品なので、原料のカカオ豆の質が良くなければ美味しいチョコは作れません。でも原料のカカオ豆を生産する人は、自分でチョコを作って食べているわけではありません。実際にどんなカカオが美味しいチョコになるか分からないし、興味もない。だって自分で食べられないんだし、良いカカオを作っても、その質に見合った価格で買い取られるわけでもないんだから。え?と思われる方もいるかもしれませんが、インドネシアのカカオの買取価格は遠くニューヨークの国際相場が決めてしまうのです。だから、頑張って高品質なカカオを作ったとしても、それが報われない世の中。決めるのはどこにいるとも分からない世界の投資家。真面目な生産者が馬鹿を見る世界。

そんな世界を変えるにはどうすればよい?それは至ってシンプル。質の良いカカオを作ったら、ちゃんとそれに見合った対価を支払いましょう。シンプルではあるけど、効果は抜群。「努力してそれが報われるなら頑張って良いカカオを作る!」そんなカカオ農家が着実にスラウェシ島で増えています。

カカオなんて収入の手段でしかないと思っていた農家が、はじめはより高価格で買い取ってもらうために発酵したり努力しだします。そして所得が上がったら、そのお金で冷蔵庫やバイクを買うようになってきました。それだけではありません。金銭や物質の面で余裕がでてきたら、今度は子供を大学にやろうとしたり、本を買ってあげる親が出てきました。これはまさに世代を超えたソーシャルインパクトの様相を帯びてきたと言えるでしょう!

真面目な人が報われる世界に変わってきました。すると新しい価値観が産まれだしたのです。つまり、「やりがい」です。これまではカカオを生産するのは、それが好きだからではなく、単に土地があって作れば買い取ってくれるからみんな育てていました。しかし、努力の結果が報われると知った彼らは次第に所得向上のためだけではなく、良い品質のカカオを生産することに自信と誇りを持ち始めたのです。

Dari Kのツアーで日本人が現地を訪れました。自分が作ったカカオがどれだけ日本の人を笑顔にしているかを、外国人なんて全くいない村で、彼らは日本人から直接聞くことになります。Dari Kは実はたまにお客さんにインタビューをして動画を撮っているのだけど、この動画をインドネシア語の字幕付きで見せます。

するとどうでしょう。彼らの表情が変わりました。消費者と生産者がリアルでつながった瞬間。人から聞くのではなく、実際に自分の目と耳で、日本人がスラウェシの農家が頑張って作ったカカオのチョコを美味しい、ありがとうと言う。それに対して、喜びと誇り、そして「化学肥料は使うのを辞めよう。この人たちにもっと美味しいカカオを届けたい」そんな希望と責任が生産者に芽生え始めたのです。

もはやDari Kは技術指導をしなくても、彼らは自発的に周りの農家に技術指導を始めます。Dari Kが変えたのは、「カカオの質そのもの」ではなくて「カカオ農家のマインド」なんです。あとはもう私たちが「変える」必要はありません。彼らが1人称で自ら「変わる」のだから。

これからDari Kの取り組みの第2章が始まります。それは、気候変動の問題。世界的な気温上昇と異常気象。今年スラウェシ島では雨がもう2~3ヶ月降っていません。乾季であるとはいえ、そんなことはこれまでありませんでした。数日に1回は短い時間でもザーッと熱帯特有のスコールがきていなのに・・・

カカオに限らず農家は当然大きな打撃を受けます。水がないので栄養が木にいかず、実がならない。なっても小さな実で熟さない。この地球温暖化問題を止めることは非常に難しいです。今年12月にパリでCOP21(国連気候変動枠組条約第21回締約国会議)が開かれますが、もはや温暖化をストップすることはできず、どうやったらそのスピードを緩めるか、そしてもう止められない気候変動に対し、どう適応していくかという予防策から対応策へのシフトも議論されます。

Dari Kはこの度、日本の経済産業省から委託され、インドネシアにおける気候変動策としてカカオを中心としたアグロフォレストリの実証実験を始めます。日本政府とインドネシア政府、両政府からの期待も大きいです。もしDari Kが結果を出すことが出来れば、インドネシアに限らず全世界の農業従事者に大きな指針を与えることができます。生産者を「変える」のではなく、彼らが自然と「変わる」ような仕組みをまた一つ作るため、今日からまたインドネシアへ旅立ちます。