最近、学校の先生からカカオ豆のご注文を頂くことが
多くなりました。もちろん、お取り寄せでは職業を
書く欄などはないので、どうして学校の先生なのか
分かったかと言うと、チョコレートではなく
ローストカカオ豆を1~2袋のみをご注文下さるからです。
この場合、商品の代金より送料の方が高くなってしまい
それでもお間違いがないか電話で確認すると
「実は教師をしていて、授業で生徒にチョコレートが
何で出来ているか、それを紹介するために使いたい」と
学校の先生であることが判明するわけです。
こういった先生の取り組みには敬意を表すると共に、
私自身全面的に協力したいので、普段販売はしていない
生のカカオ豆を無償でお分けしたり、Dari Kのカカオ豆の
産地インドネシアでの取り組みや今後の計画、
フェアトレードやその問題点などの資料を
お送りしております。
今、Dari Kでは農家の発酵したカカオ豆を輸入していますが
近い将来は、現地で加工して付加価値をつけてから
輸入することも考えております。
こうすることで、現地農家の所得が向上したり、新たに
雇用を創出することができるだけでなく、何より現地で
チョコレートの製造までできれば、彼らのカカオに対する
愛着やモチベーションもあがると思うからです。
そもそもチョコレートを食べたことのない農家の人に、
チョコの原料となるカカオを美味しく作ってといったところで
それは難しいし、ちょっとの工夫でWin-winになれるのなら
それをやらない手はありません。
もちろん、「言うは易し、行うは難し」で、これは簡単なことでは
ありません。例えば、原料のカカオ豆を日本に輸入した場合、
関税はかかりませんが、加工して輸入すると関税がかかります。
具体的にいうと、カカオ豆での輸入なら0%の関税率も
カカオマス(カカオ100%のペースト・固形物)にすると5~10%、
チョコレートにすると20%以上と加工度が上がるにつれ
関税率も高くなるのです。(これを傾斜関税と言います)
この傾斜関税の原因は、例えばカカオ豆は日本では
栽培・収穫できないので税率は低く、チョコレートには
砂糖が入っており、日本は砂糖がとれるので、
海外でチョコレートまで完成品として作ってしまうと
日本の砂糖が使われない、よって日本で収穫・生産できる
ものには税率を高くしましょう、そんな意図があるのです。
要は自国産業の保護ですね。(ちなみに米には、実質的に
関税率は700%以上となります。)
こうした傾斜関税の存在により、「あー、だったら
豆(原料)のまま輸入して、日本国内で加工したほうが
いいや」となってしまう、そして輸出国(多くは途上国)では
付加価値をつける術もないまま、相変わらず原料の
輸出のみをする、これが現実です。
もちろん、輸出国政府も黙ってはいられません。
なるべく自国で付加価値をつけてから輸出しようと
「輸出税」をかけたりましす。Dari Kのカカオ豆の調達先である
インドネシア政府は2010年4月からカカオ豆の輸出に対し
0~15%の輸出税をかける政策を採っています。
0~15%と幅があるのは、その時のカカオの国際市況(相場)
によって税率が変わるということなんですが、これによって
何が起こっているか?
この輸出税が出来たからって、じゃあ加工して売った方が
税金がかからなくていいから加工しよう、とは農家のレベルでは
ならないわけです。だって設備も知識もないのですから。
そうすると、輸出業者は国際市場で価格の低さの優位性を
武器にインドネシアのカカオを売っていたのに、
この輸出税により価格の競争優位性を奪われることになります。
たとえばこれまで輸出業者は農家から70円で買い取り、100円で
海外へ売っていたとします。今輸出税10%がかかるので、海外への
売値は110円に。それだと競争力がないから、100円に据え置きたい
輸出業者。彼らは、100円で売るために、税金の10円の負担を
農家に転嫁すればよいのです。つまり農家から60円で買い取り、
輸出税10%込みで100円で売れば、輸出業者にとってはマージン
(利益)は30円のままで変わらず、輸出税もきちんと払ってるし
競争力も傷ついてない。そのしわ寄せを被るのは農家なわけです。
こうして考えると、輸入側(多くは先進国)の傾斜関税であったり、
輸出側(多くは途上国)の輸出税は、それぞれ「自国産業の保護」
であったり「自国内の付加価値創出奨励」という目的は
理にかなっているものの、それが公平で公正な貿易、ひいては
世の中を作っているかというと、そうではないような気がして
なりません。
しかし、それを嘆いていても仕方がないのも事実。
どこまで変えられるか分かりませんが、この課題に挑戦していくために
Dari Kを設立したので、これから色々頭を使いながら
この難問にチャレンジしていこうと思います。
教育現場へ
2011年10月2日