数日前のこととなりますが、岡山県は倉敷にある
「倉敷 食と器 専門学校」で講演をしてまいりました。
これまで何度か講演やプレゼンテーションを
頼まれたことはありましたが、Dari Kとしての講演は
Foodtechに続き2度目。
しかも今回の対象は製菓学校の学生さん。
FoodtechではDari Kの取り組みやインドネシアの
カカオのことをメインにお話しましたが、今回は
チョコレートの原料としてのカカオについての
講義を90分と、生カカオ豆からチョコレート作りまでを
約4時間の実習で行いました。
そもそも「倉敷 食と器 専門学校」に呼ばれる契機と
なったのは、高度製菓製パン学科の学科長の先生との
出会いにさかのぼります。
メールでご連絡を頂き、お店にお越し下さり、
Foodtechでも講演をお聞き下さり、そうした中で
色々お話するようになりました。
講演依頼を受けてから、何度か打ち合わせをさせていただき
講義の内容と実習の流れを確認し、いよいよ本番へ。
カカオを取り巻く歴史・成育条件・種類・収穫後の過程などを
一通り解説した後で、チョコレートの味を決定する要素についてや
カカオとクーベルチュールのそれぞれのメリット・デメリット、
フェアトレードの現状と課題について、かなり深いところまで
お話させて頂きました。
技術的な点では、学科長はもちろん、将来のパティシエ・
ショコラティエのタマゴである学生さんに及ばない私ですが
カカオの分析やその潜在性を最大限高める方法についての
考察、経営的な見地から考える素材選びなど、自分ならではの
視点で色々お話させて頂きました。
いくつか鋭い質問も出ました。
例えば「カカオ豆の味が一粒ずつ違うと、チョコレートの
味を安定させることができないのではないか?」という疑問。
私の答えはこうでした。
「カカオ豆の味が一粒ずつ違うのは、カカオが農作物だから。
味を常に一定に保たれた、みんながよく口にする市販の
チョコレートというのは、逆に言えば、その分カカオを
使用しておらず、植物油脂や砂糖、香料などを多く
使っているから安定している(ようにみえる)だけ。
素材本来の味を活かせば活かすほど、その素材が農作物
である限り、味がぶれるのは当たり前。Dari Kは毎回若干
味が異なることさえ、安定していないというネガティブに
とらえるのではなく、むしろそれだけ素材が活きている証拠、
とポジティブに捉えている。
味は安定させなければならない、というごく当前の
ようなことでも、本当にそうなのか、それは常にいかなる
状況でも当てはまるのか、当たり前に聞こえるものほど
しっかり考えねばならない。常識が覆される時、そこに
転機もチャンスも眠っている」というものでした。
もちろん、かといってあまりに味がばらつくのは
よくないのは事実。誤解を招かないように補足しておくと
Dari Kでは現実的には、カカオ豆を例えば5粒食べたら
味はバラバラかもしれないけど、1000粒をペーストにすると
味はだいたい正規分布になり、出来上がりは平均的な
スラウェシの発酵カカオの味に収束すると解説しました。
また毎回味はチェックしているので、正規分布していても
これまでの平均的な味との乖離が大きい時は、
焙煎具合を調節することで味のバランスはとっているとも
説明しました。自家焙煎だからこそ出来る強み。
まさに、これなんです!
次に他の学生さんの質問。
「どうして(インドネシアやガーナなどのカカオ生産国の)現地で、
チョコレートまで製造しないのでしょうか?」
これに関しては、投資に関わる費用や人材などといった
ハード面での課題を挙げるだけでなく、それがクリアしたとしても
結局消費国である先進国側の傾斜関税(これについては
以前書いた「教育現場へ」の記事を参照)
の存在などに触れながら、そういったインセンティブが働きにくい
現在の貿易構造について話しました。
もちろん、それを望まない穀物メジャーや業界大手も
言わずもがな存在します。
みんな真剣に聞いて下さったので、大変やりがいが
ありました。でもやっぱり製菓学校の学生さん。
実習になると目の輝きが変わります!
生のカカオ豆を洗浄することから始まり、みんな興味津々。
生のままかじってみて、ローストしたものをかじってみて、
味の感想をすかさずノートにメモしていました。
焙煎した後は、一粒ずつ殻を剥いて頂き、そこから
すり鉢でゴリゴリ。するとと~~~~っても香ばしい匂いが
実習室を埋め尽くします。
最後はガナッシュを作り、冷やして試食。
これまでのチョコレートと違いにみんな驚いていました。
予想以上に酸味が強かったのでしょう。
「酸っぱいチョコレート?」でも書いたとおり
本当のカカオの味がするチョコは酸味があるんです!
こうして学びと発見を自ら体験していただいて、
なんだか私もすごい充実感がありました。
60人近くの学生のうち、きっと多くの方が製菓の道へ
進まれることでしょう。そしてチョコレートを扱うときに、
この講義のことを思い出してくれたらな、そう
思うと胸が熱くなりました。
このような機会を与えてくださった倉敷 食と器
専門学校の先生方、本当にありがとうございました。
今月末には近畿大での講演もあるので、今度はそちらの
準備をしようと思います。でもその前に、あと数時間後には
もうベトナム行きの飛行機の中。
今度は日本青年代表として、東アジア(ASEAN+日本・中国・韓国)
13カ国の中でしっかり存在感を出せるよう、海外の
青年たちと議論をしてきます。刺激を与え合って、
東アジア全体が健全でHappyな方向へ進むよう、
全力を尽くしてまいります。
この間、Dari K店舗はショコラティエの一人体制と
なるため17日(月)~21日(金)は営業時間が通常より
2時間ほど早く18時閉店となります。
ご迷惑をおかけしますがどうぞご理解下さいませ。
それでは行ってまいります☆
倉敷 食と器 専門学校での講義
2011年10月17日