新作 │ 発酵にこだわるチョコレートトリュフ

dari K to the World
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世の中には2種類の人間がいる (1)

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2011年、脱サラして全くの素人ながらカカオ豆からチョコレートを作り、図らずも日本のBean to Barブランドのパイオニアになった。

単にカカオ豆から手作りでチョコを作ることにとどまらず、生カカオ豆を発酵する際にオリジナル酵母を入れてカカオ豆の香りをコントロールしたり、カカオ豆を取り出した後に通常はそのまま捨てられてしまうカカオの殻をメタン発酵してメタンガスを抽出し、脱硫後にエンジンを回して電球を灯すなどカカオの産地においても数々のチャレンジを成功させてきた。

最近では、2018年10月に、カカオ豆からカカオマス(カカオ100%のペースト)にするのに通常は数時間~数十時間かかる工程をなんと1分で出来てしまうマシンを大手家電メーカーと共同開発した。自分で言うのもおこがましいが、これはチョコレート業界にとって、いやチョコレートの歴史において革命的出来事だと思っている。

本当にそれが革命的かどうかはさておき、京都の1チョコレートブランドでありながら、サプライチェーンの上流から下流すべてにおいて既に存在している「常識」にチャレンジしてきたことを評価され、ありがたいことに「吉野はイノベーティブだ」と仰っていただけることが少なからずある。

承認欲求の塊のような私にとって、そのようなお言葉は光栄であり嬉しいと思う一方で、歯がゆく思うことがある。それは、このような常識にとらわれない、あるいはそれまでの常識にチャレンジする発想は先天的に授けられた才能ではなく、自身の努力によって後天的にいくらでも身につけることができる能力であり、極論すれば努力の賜物に過ぎないということだ。つまり、私が特段すごいわけではなく、ただ努力して型にはまらない考え方ができるようになった、それだけのことだと思うのだ。

生まれながらにイノベーティブな人なんて、きっといない。かのスティーブ・ジョブズでさえ、イノベーションの申し子として産まれたわけではない。むしろ両親は当時まだともに大学院生であり、生まれる前から両親に養子に出されることが決まっていたほどだ。彼を彼からしめたのは遺伝によるものというより、その生い立ちの中で育んだ価値観と実行力だと考えるべきであろう。

イノベーティブを「型や枠にはまらず、今ある常識にチャレンジする思考」と定義するならば、これは完全に個人の努力(ある人にとっては努力しなくても結果的にイノベーティブになるケースもあるかもしれないが)によるものというのが私の持論だが、なぜそう思うかというと、実際にイノベーティブの要素を微塵も持たなかった自分が、ある出来事を機にマインドセットに大きな影響を受け、それから自然とイノベーティブな発想ができるようになったという経験があるからだ。

その経験とは、…続きはこちら