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dari K to the World
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ミンダナオ出張記(2)

さて、昨日はフィリピンのミンダナオ島がどういう土地かということについて書きました。今日は私がこの地にやってきた理由を綴ってみたいと思います。

これまで40年以上にわたり10万人以上の死者を出してきた政府とイスラム系住民との武力紛争ですが、ここ数年で和平交渉に進展が見られました。そして今月末から新大統領に就任するミンダナオ出身のドゥテルテ氏がその座につくと、モロ・イスラム解放戦線 (MILF)と政府間での平和構築に向けての流れは一層活気づくと期待されております。

しかし、せっかく和平の機運が高まってきているにもかかわらず、半農半兵士としてこれまでいつも紛争に駆り出され、中途半端な生計しか立ててこなかった住民が、急に武装解除するとどうなるでしょうか?安定的な収入基盤を持たない彼らは、生計を立てていくために山賊や海賊になってしまったり、再度武装化してしまうおそれがあります。

「平和」というと"政治"の世界のハナシにように聞こえますが、"経済"つまり経済的な安定なしに「平和」は訪れないと私は考えています。では住民が安定した生業(なりわい)を確保するにはどうしたらよいでしょうか?

そのカギは特徴的な土地所有制度にあると考えました。ミンダナオといっても人口2000万人以上の大きな島で、土地資源が豊富にあるという一般化はできても、詳細に見ていくと面白いことに気づきます。実はバンサモロと呼ばれるイスラム教が多く住むミンダナオの西部では、ダバオがある東部とは異なり、大地主を中心としたプランテーションが土地所有の特徴となっているのですが、これは東南アジア地域研究を専攻していた私には非常に興味深いことでした。

ダバオを中心とする都市部は小規模土地所有が多く、イスラム教が多い西部はプランテーションが多い。いったいこれは何を示唆するのでしょうか?それは、住民が小規模でも土地を所有していれば(1ヘクタールとか)、彼らは武装解除しても土地があるのでそこでコメや野菜を作って自給することができます。

しかし住民の大部分が土地なしで、一部の地主がほとんどの土地を所有しているような環境下では、住民が武装解除したところで、「畑がない、仕事がない、食べていけない」ということになってしまうのです。

つまり、ミンダナオと一口で言っても、ここには民族や宗教の違いだけでなく、土地所有形態の違いも複雑に絡み合っており、これらをしっかり理解したうえで和平が進んだ時のシナリオを用意しないと、「政治」だけで和平が合意されても、結局住民は路頭に迷うか、雇用や収入がないことに不満が募り、再度武装化・ゲリラ化に後戻りするリスクさえあるということです。

しかし、この話を聞いたとき、私は閃(ひらめ)きました!

「ミンダナオはDari Kの本拠地スラウェシ島のすぐ北にあるじゃないか!だとしたらカカオが栽培できるはず!」

スライド1

カカオは赤道を挟んで南北20度以内で栽培ができるとされており(これを「カカオベルト」と言います)、スラウェシのすぐ北にあるミンダナオであれば、気候や土壌条件も似ていると思ったのです。

その他にも少し調べると次々とアイデアが湧いてきました。

例えば・・・
・気候&土壌的に栽培可能な地域であるばかりでなく、これまで大規模な開発が入ってこなかったため、土壌に化学農薬や化学肥料の蓄積があまりなく、自然に近い状態で植樹できるかもしれない
・既にココナッツなど植えられているとしても、その樹間に植えることができるので、新たに山を切り開くなどせずに既存の農地を活用できるかもしれない
・Dari Kがインドネシアでやっているように、技術指導により、カカオの生産性が劇的に増える可能性がある
・カカオ栽培に関わる労働者(小作人)のが必要になり、多くの住民にとって雇用の機会になるかもしれない
・さらにポストハーベスト(収穫後処理:発酵、選別、乾燥)の工程においては、男性だけでなく寧ろ女性の労働力が活用できるため女性や旦那を紛争で亡くした方にも雇用機会を与えられるかもしれない
・ガーナなどのアフリカよりも位置的に断然日本に近く、日本-フィリピンEPA(経済連携協定)も締結済みなので、フレイト(海上運賃)や関税面でもメリットがあるはず

つまり、ストーリーとしては、和平交渉が進み、非武装化が進む中、カカオ栽培をすることで土地を持たない住民も小作人として収入源の確保ができ、経済的安定をもって平和構築に寄与できるという流れです。

これまでダリケーはインドネシアにおいて、「ニューヨークやロンドンという遠い市場で決められるカカオの国際相場に踊らされ、やりがいを喪失しつつある農家に対し、技術指導と品質に応じた価格での買い取りによって、彼らの誇りや自信を回復しつつ、所得向上に寄与する」ことを目指して活動してきました。

そして今、その活動はインドネシアにとどまらず、ミンダナオでは平和構築の文脈の中で、サプライチェーン確立まで含むアグリビジネスのスキーム策定をミッションとして、その可能性を調査しに来たのです。

まさに「カカオを通して世界を変える」の会社ビジョンを体現するかのような大きな挑戦です!

セキュリティガード同行という緊張感のある土地で調査を進めることになったのですが・・・
そうやすやすと物事が進むわけではありません。早くも現地住民の声を聞き大ピンチ!

いったい何が起こったのか、続きを乞うご期待ください!