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dari K to the World
ブログ

マジメな経済のハナシ

これを書くつい5分前に日経の電子版を見ていたら「インドネシア、ルピア急落で経済対策 輸出企業に税優遇」(www.nikkei.com/article/DGXLASGM16H6Z_W5A310C1FF8000/)という記事を見つけたので読んでみた。

なんだかすごい展開になっているというのが率直な感想。資源国であるインドネシア⇒中国やインドなど成長著しい国へ資源を輸出⇒それらの国で成長スピードが鈍化⇒輸入超過のトレンドは変わらない⇒ルピア安基調は続く見通し⇒アメリカの株高と利上げ観測⇒投資マネーのルピアから米ドルへの転換とインドネシアからの流出⇒さらなるルピア安圧力へ。

貿易赤字や輸入超過の中でのルピア安は、輸入品の物価高になるためインフレを招く。それがまたルピア安にもつながる。そのような状況下で政府は機動的かつかなり大胆な策を打って出るようだが、その効果も疑わしいらしい(そりゃそうだ、超大国なんだから!)もはやインドネシアはアジアのリゾート観光地ではなく、世界経済にインパクトを与え得る存在感になっているのだ。

実は今月初めに幕張でFOODEXという食品見本市があり、インドネシアパビリオンのお手伝いをした。2日目には、バイヤーズマッチングということで、シェラトンホテルでインドネシア工業省副大臣や在日インドネシア大使館の大使、大手企業経営者らと話をしたが、インドネシアは既にアジア経済の一端を担う大国であり、年々そのプレゼンス向上と成長実績に裏付けられた強気の姿勢には目を見張る。

今年2015年はAEC (ASEAN ECONOMIC COMMUNITY)いわゆるASEAN経済共同体発足の年である。既にFTAを締結しているASEANにあって、一層の地域経済統合がすすむ。その規模たるやASEANの人口は6億人、日本の人口の5倍だ。私が小学生だった1990年のASEANの人口は3億人で今の半分。1人当たりGDPは760ドルだったので、今の5分の1だ。大学に入った2000年には、ASEANの人口は5億人、1人あたりGDPは1200ドルなので今の3分の1だ。

僕らは東南アジアと聞くと、学校で習ったかすかな記憶の貧しい国々をイメージしがちだ。でも現実はとんでもないスピードで動いている。
1990年に貧困率が45%を超えていたのが、2012年には15%にまで減っている。2001年から2013年まで日本のGDPは20%しか伸びていないが、同時期にASEAN全体としては3倍になっている。(データ出所:http://www.asiamattersforamerica.org/asean/data/gdppercapita)

そんなASEAN10か国の中でも、人口4割の2.4億人(日本の2倍)を誇るインドネシアは成長著しい。インドネシアだけでなく、タイやマレーシアでも同じだし、ASEAN後発加盟国のいわゆるCLMV(カンボジア・ラオス・ミャンマー・ベトナム)はなおさらだ。

日本は危ない。少子高齢化という社会構造的な問題と、経済の成長は、別々の問題としてあたかもそれらの事象が独立して起こっているように語られることも少なくないが、これらは互いに大いに影響しあっている。そんな中、私が日本にいてもっとも危ういと思うのは、「ものづくり・技術立国」とか「伝統を守る」とか過去の栄光にすがりつくそのマインドセットだ。行政も経済界もみんなそう。培ってきたもの、保有する技術は大事にすべきだけど、それを今後の経済政策や将来のビジョン達成の核にするのは正直言って間違っていると思う。

とはいっても中小企業が99%以上を占め、彼らの支持が必要な政府が、それらを標榜する必然性も分からないでもない。でもだからと言ってそれがベストなソリューションかといえば、決してそうではないはずだ。今我が日本に必要なのは、自分たちにあるリソースは何かという内向きな議論ではなく、まずは今の日本は世界経済の中でどのような立ち位置にいるのか客観的に見なければいけない。持っているものを磨いてそれを無理やり売ろうとしても売れない。プロダクトアウトが通じるのは高度経済成長で購買意欲も購買余力もあった昔だけ。日々目まぐるしく変化を遂げる今の時代には、マーケットインでやらないとダメなんだと思う。そしてそれは国内にいたらできないことだ。日本を離れて初めて日本の良さが分かるように、自らを客観的に見るには外に一度でなければならない。

毎日満員電車に揺られてスマホのゲームをやるか居眠りして会社に行くサラリーマン。毎日代わり映えのないルーティンワークををつまらないと思いながらもそれが仕事だと言い聞かせて、やり過ごしている場合ではない。自分1人が意識を変えたからってこの世の中がすぐに変わるわけではないけれど、少なくともまずは自分を、我が国を客観的に見る努力をする必要は十分にある。

嬉しいのは、今の若者は謙虚な人が多いが、実は自分や国を客観的に見えている人が多いことだ。Dari Kのインターン生(大学生)と話していて、あるいは私が大学で講演に行くたびに、それを強く感じる。時代のせいもあるけれど、今は格安航空券より正規運賃でさえもっと安いLCCが身近にあり、ネットは大学のパソコン室に行かなくてもスマホでつながる。彼らの情報源に国境はなく、入ってくるニュースも自ずと今の40代、50代とは比較にならないほど多い。

30代前半の僕でも彼らとジェネレーションギャップを感じるほどだが、きっと彼らこそが日本を変えて、そして今後引っ張っていく力のある存在だと思う。今日本に必要なのは「人に対する投資」だと思う。お金をつぎ込むという短絡的な話ではなく、いろんな経験をさせること。経験があれば後々お金を生むことはできるけど、お金で経験を買うことはできないから。

Dari Kは2011年3月11日、奇しくも東日本大震災の日に登記完了したので、先日で設立からちょうど4年が過ぎた。5年目に入った今年は、いろいろな意味で「投資」する年にするつもりだ。それが個人や企業の成長だけでなく、もっとマクロに日本や世界経済への貢献になると信じている。信念あっての成長、それを体現できるような1年にしたいと思う。