新作 │ 発酵にこだわるチョコレートトリュフ

dari K to the World
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ビューティー・コンテスト

ここ1~2週間、新しいフレーバーの試作を
繰り返してきました。幸いなことにアイデア自体は
沢山浮かんでくるので、ショコラティエと共に
順番に試しています。
Dari Kの真骨頂は、「濃厚なのに後味すっきり」
という口の中のコントラスト。つまり焙煎したての
カカオ豆を使うことによって濃厚で薫り高きアロマが
口いっぱいに広がる一方で、カカオバターや植物油脂など
油分を追加しないため、口まとわりつくような
しつこさがないということ。
だから、何かを混ぜることでこのコントラストの邪魔を
して欲しくないし、カカオの味が感じられなく
なるほどフレーバーが主張するのは避けたいのです。
リキュールを入れることで味を変えるのは簡単ですが
それをしてしまったらカカオの豆からこだわっている
意義が薄れてしまうし、せっかくしっかり発酵した
カカオ豆の良さを打ち消してしまうことにもなりかねません。
だからやっぱり新しいフレーバーは今の6種類の
フレーバーと同等かそれ以上のクオリティないし
完成度でないと納得できないし、フレーバーの数を
増やすことに執着するあまり、味のハードルを
下げてまで追加することはありません!
それで肝心の試作の進捗ですが、完成まで
あと一歩のものが出来上がっております。
味はほぼ決まったので、あとは2~3日置いてみて
味の変化や劣化がないか最終チェックして
デビューとなりそうです。
最終的に味というのは客観的に点数や順位を
つけることは出来ないんですよね。そんな中で
どのような商品を作っていくべきかと考えることは
経済学者ケインズのいう「Beauty contest」つまり
「美人投票」の理論みたいになってきがちです。
これは、100枚の写真の中から最も美人だと思う人に投票し、
最多の票を獲得した女性に投票した人に賞品が送られるという
イベントがあったときに、人は自分の好みによって
一番の美人を選ぶのではなく、他の人が選びそうな
平均的な美人を選ぶということを例にとった金融市場の
投資の考え方の一つです。
つまり、どの株に投資すべきか考えるときに、
自分が一番魅力的だと思う株に投票するよりも、
最も多くの人(他人)が魅力的だと思う株に
投資した方が(その株の需要が多いということだから)
値上がりが期待できるので、そのような
株に投資するやり方です。
話を戻して、フレーバーの新作を考えるときにも
生産者・製造者のひとりよがりはよくないと思うのです。
いくら自分が完璧だと思ってある商品をつくり上げても、
それが消費者のニーズやウォンツに適合しなければ
それは単にマーケティングの失敗のみならず
せっかくの努力が実らないことになってしまいます。
ですからDari Kではちゃんと美人投票をしています。
それこそ私が何十もアイデアを出して各フレーバーの候補とし
この中でお客様が最も美味しいと感じてもらえそうな
ものはどれか、ということを同時に考えます。
ただ、チョコレートの世界は金融とは違います。
美人投票の理論だけでは割り切れない部分もあると思うんです。
例えばあるフレーバーはもしかすると万人受けしないかも
しれません。でもそれは多くの人がそのフレーバーの
奥深さや可能性をまだ理解できていないからであって
もし一度知って頂くと、その魅力が分かってもらえるかも
しれないのです。
幸か不幸か私は菓子職人やショコラティエではありません。
だからこそ、パティシエにとっては奇抜すぎて、そもそも
試作することもなく「ボツ」として普通は試してもらえない
ようなアイデアでも、うちの優秀なショコラティエに
とりあえず作ってもらいます。そして、出来上がったものを
先入観を除いて味わってみるのです。
Dari Kのビューティー・コンテストは始まったばかり。
ケインズの言うようにオーソドックスに好まれるものを
探してばかりいると、ひょっとしたらダークホースに
足をすくわれるかもかもしれませんよ!そうならないためにも
今後新作が出てきた際には是非ご自分の舌でご確認下さい☆