さて、ゴロンタロがいかにワイルドなところかは分かっていただいたことと思います。なかなかキングと一緒にルームシェアをしたり、壁から直接出る水シャワー、というかただの水で身体を洗ったりと、かなり過酷な状況下であることは間違いありません。さらにラマダン(断食月)と重なったので食べるのも一苦労。普通の人だったらめげちゃうかもしれませんが、ホント僕はラッキーです。
昔取った杵柄ではないですが、10代・20代の頃世界をバックパックで回っていたから、こういうのに免疫があるお蔭でなんとか乗り越えていけるんだと思います。思い返してみれば、バックパッカーとしてのあの時代は本当に過酷でした。今はLCCがあるので、だいたい陸路よりも飛行機の方が安いのがほとんどですが、10年前、15年前はLCCなんてありませんでした。安く行くならひたすらバス&列車だったなぁ。香港からチベットまで何十時間も電車に揺られたり。チリのサンチャゴからアルゼンチンとの国境を行ったり来たりしながら南極に一番近い町ウシュアイアまで、これまた何十時間とバスに乗ったり。ヨーロッパ横断は比較的楽ですが、エジプト➡ヨルダン➡レバノン➡シリア➡トルコに抜ける中東北上や、シンガポール➡マレーシア➡タイ➡ミャンマー➡ラオスのマレー半島縦断とか、メキシコ➡グアテマラ➡ホンジュラス➡エルサルバドル➡ニカラグア➡コスタリカの中米南下はかなり思い出深いですね。
今もし私が学生で旅に出るとしたら、LCCばっかりを使うだろうな。やっぱりバスよりも安いし、短時間で移動できるし、メリットしかないと思っちゃう。でも昔はその選択肢がなかった。飛行機は最終手段的な位置づけで、陸路だと山賊が出たり、あるいは自分の体調がすこぶる悪いときだけの非常手段としてしか考えてなかった。通常は考えるまでもなくバスに乗っていた。他の旅人も同じ。みんなたいていバス。バスで国境まで行き、スタンプ押してもらって国境をまたいで、またバスに。飛行機で隣に座った人と話すなんてあまりないけど、バスだと移動時間も長いし、食事休憩やトイレ休憩がある。言葉が分からないと何分後にバスに戻るかとか、どこにトイレがあるかとか、いやでもコミュニケーションとらないといけないので周りの人と話して仲良くなったなぁ、なんて思い出しました。(昔のバックパッカー時代の動画はこちらをご覧ください!)
まあそんなこんなでゴロンタロで活動してきたわけですが、ここで新たな真実をいくつも見つけました。1つはなぜこのゴロンタロの地は他のスラウェシの地域と比べて、カカオがあまり普及されていないのかという理由。そしてもう一つは、農家とコレクター(回収人)と呼ばれる仲買人の関係。農家は自分のカカオ畑で獲れたカカオ豆を輸出業者や加工業者に直接売りに行くのは稀で、通常はコレクターが農家の家までバイクで来て、各農家から豆を買い取ってくれるんです。このことはこれまでも知っていたし、便利なシステムだとは思ってました。そして、1つの村に1人のコレクターがいるわけではなく複数人いて、さらに別に各コレクターにはカバーする農家のテリトリーがあるわけでもないので、農家がどのコレクターにカカオを売るかは、タイムリーに来てくれた人か(利便性)、あるいは少しでも豆を高く買い取ってくれる人(経済性)なのだろうと思っていました。
しかし!!実はここにある驚愕の事実が隠されていたのです。それはカカオのバリューチェーンを知り尽くしていると自負していた自分も知らない事実でした。そしてこの事実は、インドネシアの経済の実態および人間の心理的なものと深いつながりがあったのです。
これは本当に驚きました。と同時に、なぜ欧米のチョコレートメーカーやコモディティ大手がカカオ豆の調達に苦労するか、なぜ彼らは生産者であるカカオ農家となかなか近づくことができないか、なぜ直接的な信頼関係を結べないのかという現象の根本理由が一気に理解できました。非常に面白い発見で大興奮でした!この真実を知った今、自分に何ができるか、何をすべきか、急に道が拓けた気がしました。
ここで詳細を書きたいのですが、世の中はとても怖いものです。情報を公開すると、すぐに飛びついて真似する輩が出てきます。日本ってそういうのあまりないと思っていたのですが、もうびっくりするくらいそういうのってあるんですよね。Dari Kの商品や宣伝文句もどれだけパクられたか・・・
商品のパクりに対しては非常に憤るわけですが、でも仕方ない部分もあると思うんです。たとえばどら焼きとか大福とか、モンブランとか、初めて開発した人にとってはどんどん他の会社が真似てしまってるわけで、コノヤローと思ってると思いますが、特許取れるわけでもないので「元祖○○の店」とか言って頑張るしかないわけですよね。うちのはちみつカカオやニブチョコもパクられてますが、素材の質が格段に違うから優位性は十分保たれてると思います。
しかーし!!宣伝文句をパクられるというのは、怒りとかを通りこしてもうなんか「エッ?」って感じです。「あなたここまでパクっちゃって大丈夫??」的な。ダリケーは「カカオが香るチョコトリュフ」とか「カカオが香るチョコアイス」とか「カカオが香る」というのを枕詞に使っているのですが、コンビニ最大手がPB(プライベートブランド)で「カカオ香る○○」みたいな商品を今年出したときに「おおっと!?」という感じでしたが、まだギリギリセーフかな、と思いました。きわどい線ではありますが、偶然同じようなキャッチコピーになってしまった可能性も否定できないし。
しかーし(2回目)!実は少し前にお客様より「Dari Kに非常に似たブランドがある」とタレこみがありました。まあ最近はBean to Barと呼ばれる、カカオ豆からチョコづくりを手掛ける専門店も増えてきたため、別にダリケーと似た店ができてもそんなに驚くことではないと思っていたのですが、何やらそうではないと。とにかくDari Kの文言と同じことをそのブランドはHPで謳っているというので、確かめてみるとまさに・・・
たとえば・・・
Dari K(以前のリーフレット「親愛なるカカオマニアの皆様へ」の中):
『挽きたてのコーヒーとインスタント・コーヒーの味が全く異なるように、ローストしたてのカカオ豆で作ったチョコレートは他のどんなチョコレートと比較しても香りの違いは歴然としています』
他社のHP:
「Bean to Bar」という製法は、インスタント・コーヒーと挽きたてのコーヒーの味が全く異なるように、まったく新しい味わいを感じていただけます。ローストしたてのカカオ豆で作ったチョコレートは、新鮮さゆえに繊細で奥深い香り高さが特徴的です。
Dari K((以前のリーフレット「親愛なるカカオマニアの皆様へ」の中):
『カカオ豆の焙煎から手がけるには、それだけ熟練した技術と多大な手間がかかります』
他社のHP:
カカオ豆の焙煎からチョコレートにするまでには、熟練した技術と時間がかかります。
Dari K(現在のHP):
『口いっぱいに広がるカカオの風味と、さっぱりとした後味。カカオ本来の風味をより多くの方に味わっていただきたい』
他社のHP:
是非とも一度、このBean to Barチョコレートの「口いっぱいに広がる本来のカカオの風味」をお楽しみください。
Dari K(私がいつもセミナーでいう言葉):
皆さんどんなチョコが好きですか、と聞くと「甘いチョコ」や「ビターなチョコ」と言いますが、「新鮮なチョコ」って言う人っていませんよね?
他社のHP:
「甘いチョコレート」や「ビターなチョコレート」と聞くことはあっても「新鮮なチョコレート」と聞くことは少ないのではないですか?
いかがですか・・・?
これってアウトじゃないですか??
もうサッカーならレッドカードで一発退場ものじゃないかと思うのです。。。。
でもいいんです。パクられてナンボと思ってやっていきます。なんというか、本当はパクられたと訴えてやりたいところですが、それをしている時間があれば、もっともっとやらなければいけないことや、やりたいことがあるので、先に進むことにします。
ということで、話が随分脱線してしまいましたが、こうやってマネされてしまってHPにドドンと出ちゃうような怖い世の中なので、今はゴロンタロでの発見についての詳細は書けないものの、今回の発見は今後のDari Kの展開を大きく左右するものだったので、これを今後活かして現地でのコミットを強くしていければと思っております。(そうそう、夏のツアーの参加者には現地でこの新発見がなんだったのかお話しますね!お楽しみに~!)
それでは、これをもって今回のゴロンタロ訪問記は一応終わります。まだまだプロジェクトは始まったばかり。これから2~3ヶ月に1回はゴロンタロに行くので、またキングと再会しちゃったりHYATTホテルのタオルを使うかもしれませんが、それも笑って過ごせるくらい器の大きな人間になりたいと思います。
(おわり)