12月3日に、京都の洋食業界のオーナー・経営者で
構成される京都洋食会の若手の集まり
「京都洋食会 次の会」にて、カカオとチョコレートに関する
講演をさせていただきました。
これまで経営者のセミナーや集まりで講演を
させていただいた経験は何度もありますが、
広い意味での同業の方にお話をさせていただいたのは初めて。
参加者のほとんどが、代々受け継がれているレストランの
後継者であったり創業して10年以上大きくしてきた方ばかり。
そんな中、設立してまだ2年目の自分に声をかけて
いただけたこと自体がありがたいと同時に、色々なことを
積極的に学んで自分の店に活かしたい、という皆様の謙虚な
学びの姿勢を、私の方が学ばせていただきました。
さて、翌日は朝一番の新幹線で東京へ。
ミーティングや今進行しているプロジェクトの
打ち合わせをしてきました。
実はこの写真が、今回のプロジェクトのヒント。
何ができるかはもう少しお待ちください!
さて、今回は大事なお知らせがあります。
それは値上げに関すること。値上げはお客様にとって
嬉しいことではないですが、Dari Kにとっても
嬉しくないこと。
でも、値上げには理由があります。
理由をきちんと説明すること、それが製造者として
また販売者としての責任です。ですので、この場を
借りて説明させていただきます。
値上げ商品
①クエカカオ(1カット350円→420円)
ガトーショコラ(1台2,100円→2,520円)
②カカオドリンク(1個350円→420円)
【クエカカオとガトーショコラの値上げの理由】
みなさんはお気づきでしょうか?
スーパーでバターの価格が上がり、流通量自体も
少なくなっていることを。
2011年3月の東北大地震により、多くの農家が被害を
受けたのは周知の事実です。もちろん、多くの酪農家も
例外ではなく、東北だけでなく北海道でもその影響は
少なくありませんでした。
乳の供給量が減り、政府やメーカーは次のような施策を
講じました。バターなど加工するより、乳はなるべく
牛乳として流通させること。
流通は卸売りよりも小売をメインにすること。
流通先は被災地が優先順位が高く、それから関東へ
そして関西へと下っていくこと。
供給が減った分、価格が上がっただけでなく
製菓・製パン業者向けのバターの供給は一気に少なくなりました。
メーカーと長い付き合いのある、大手の製菓・製パン業者なら
まだしも、関西で、しかもまだ設立間もないDari Kには、
バターの供給が完全にストップしてしまいました。
幸いDari Kでは、チョコレートにバターは使っておらず、
焼き菓子に入れているだけでしたが、この影響で
一時焼き菓子を作らなくなりました。
バターの代用としてマーガリンがあります。
多くのお客様が焼き菓子の販売を望む中で、マーガリンを
使用してでも焼き菓子をすべきか悩みました。
味そのものへの影響という意味では、カカオの味が
非常に強いDari Kの焼き菓子にはバターでもマーガリンでも
他のお菓子屋さんほど味に影響はありません。
しかしDari Kのお客様は素材や健康への意識が高い人が
大変多く、マーガリンのトランス脂肪酸を気にする方が
少なくないのも事実。
そこで、バターが手に入らない中、次善の策として
バターとマーガリンを混合したコンパウンドと
呼ばれるものを使うようになりました。
(今は全てバターを使用しております)
コンパウンドを使用していたときは、案の定
お客様の数人から、メールでや電話で
なぜバター単体でなくコンパウンドを使うのか
(要はなぜマーガリンを使うのか)問い合わせをいただきました。
私はマーガリン=悪だとは思いません。
トランス脂肪酸にだけ着目したらネガティブなイメージを
持ちがちですが、そもそも牛の乳や肉にもトランス脂肪酸は
存在しますし、マーガリンだけがトランス脂肪酸を含むわけでは
ありません。
しかもマーガリンもメーカーによってトランス脂肪酸の量が
全く異なりますし、マーガリン不使用でバターを
使用したケーキやパン、クッキーなどでも、ショートニングに
トランス脂肪酸は含まれているのです。
バターと比べ脂肪もカロリーも少ないマーガリンは、
皆さんが懸念しているほど危ないわけでは決してないし、
そもそもそんなに危ないのであれば、超保守的な
日本の製造メーカーは製造しないし、厚労省が販売許可を
メーカーに対して出さないでしょう。
トランス脂肪酸は危ないというメディアの報道に
きちんとその実情を調べることなく過剰に反応する人も
多かったのではないでしょうか。(その一方で
トランス脂肪酸を理解していない製菓・製パン業者も
多くいることが怖いですが)
こうした地震による乳製品の供給量の逼迫のこと
及びそれに伴う業務用バターの不足やトランス脂肪酸と
マーガリンについて、私は問い合わせのあったお客様には
一人ひとり丁寧に説明して参りました。
私は栄養学の専門化でもなければ、パティシエとして
これまでキャリアを積んできたわけではありません。
でも、それが知らなくてもいいという理由にはなりません。
現在Dari Kというチョコレートショップを経営する
責任者として、扱う素材一つ一つに対して安全性を
十分吟味し確認して、時にはメーカーに何度も問い合わせて、
自分が大丈夫だと判断したものだけを使うようにしています。
それがプロであり、製造者としての責任であり、
美味しいものを、何の心配もなく召し上がっていただくために
全うすべき最低限守るべき使命だと思っているからです。
さて、前置きが長くなりましたが、昨今ようやくバターの
供給・流通量も上向きになってまいりました。
相変わらずメーカーは横並びで価格を上げておりますし、
それを反映してか多くのケーキ屋さんやパン屋さんでも
若干の値上げをしてきたと思います。
値上げをしないところは、そもそもバターや乳製品を
あまり使っていないか、自分で利益を削ってメーカーの
値上げ分を吸収しているところでしょう。しかし本当に
良いものを、出来るだけ価格を抑えて提供しているところこそ、
原料の値上げには弱いものです。
こうした背景と思いがある中、バターの供給量も徐々に
回復しはじめ、それにあわせDari Kではまたバターのみを
使うようになりました。
そして今回、これまでのバターに変えて、「カルピスバター」を
使うことを決めました。カルピスバターとは知る人ぞ
知るバターで、このブログの読者の皆様でも知っている方は
多いかもしれません。フランスのエシレバターも有名ですが
国内ではカルピスバターは「幻のバター」とも言われ、
1本で税込1500円以上するなど、普通のバターの約2倍の
値段がする高級品です。
それでも味を追求するシェフやパティシエがこのバターを
使用するのは、その「濃厚さ」と、「後味のさっぱり感」という
本来相容れないはずの特徴を併せ持つからです。
そう、Dari Kのチョコレートの美味しさの秘密と全く
同じなのです!濃厚なのに後味がさっぱりでべたつかない、
通常二律背反なものを両方いいとこどりしているのです。
値上げは確かにしたくないのが本音。
でも、最高の味を求めるために最高のカカオ・チョコレートを
使った焼き菓子だから、バターも最高のものを使いたい、
そんな思いから今回のカルピスバター100%使用に
切り替えます。
このため価格は若干あがりますが、それは美味しさを
追求した結果。他のメーカーやお菓子屋さんが、
「原料があがってるから」と値上げを消費者に
転嫁するのとは正直言ってわけが違います。
原材料ひとつひとつと向き合い、安全・安心を担保した上で
美味しさを追求する。それがDari Kの姿勢です。
そのための値上げは、ネガティブなものではなく、
むしろ進化するためへのポジティブな挑戦。
ご理解いただけたら幸いです。
【カカオドリンクについて】
寒くなるにつれて、カカオドリンクが大変人気です。
ミルクに溶かすと、濃厚なのに脂っこくないホットチョコレートと
なるこのカカオドリンクは、そのまま召し上がっていただく
トリュフと異なり、ドリンクにしたときに一層美味しいよう
特別な配合で作っています。
今回、カカオ分をより高くするとともに、量そのものも
10%増量することにしました。これにより、本当の
カカオの味がこれまで以上に顕著に感じられるようになります。
もちろん、原材料はカカオ豆と生クリームと砂糖のみ。
保存料も乳化剤も何も加えていない、自家焙煎カカオが
香るドリンクです。
若干お値段は上がりますが、その分味もボリュームもアップした
ドリンクをどうぞご賞味下さい。
以上、一部商品の値上げとその説明でした。
出来るだけ詳しく、分かりやすく説明したつもりですが
もし何か疑問点などございましたら、ご遠慮なく
お問い合わせ下さい。Dari Kはこれまでもこれからも、
お客様に愛される存在でありたいと願っております。
そのために日々努力していきます。全ては「本当のカカオの味」を
お届けするために。
Dari K ~Real Taste of Cacao~
【重要】原材料と値上げのこと
2012年12月5日