新作 │ 発酵にこだわるチョコレートトリュフ

dari K to the World
ブログ

【カカオ101】 品種編

前回から始まったカカオ101講座。
今日は第2回目。カカオの品種について学んでいこうと思います。
カカオは大きく分けて3つの品種に分けられます。
その3つとは以下のとおり。
・クリオロ(Criollo)1~5%?
・トリニタリオ(Trinitario)10~15%?
・フォラステロ(Forastero)80~89%?
品種の後の数字は、全世界のカカオを100%としたときの
その生産割合です。「?」がついているのは、その情報源によって
この数字はまちまちなので、およそこれくらい、という
イメージで捉えて下さい。
それでは一つずつ品種の特徴を見ていきましょう。
まず、クリオロはスペイン語で「その土地生まれの」という意味の
カカオの原生種(マヤ文明一帯を起源)で、ほとんどが
中米(ベネズエラやメキシコなどが有名)で生産されています。
稀少性もさることながら、苦味が少なく、その分フルーティーな
アロマを持つことが特徴です。クリオロ自体が稀なのは、
病気や害虫など外部環境に弱く、また木一本あたりのイールド
(生産性)も低いことが原因です。
一方、フォラステロは「よその、他の土地の」という意味で、
アマゾン(南米ブラジルやボリビアなど)を起源とするようです。
病気に強く、イールドも高いため、近現代(過去50年)では
この品種を栽培する地域が殆どで、フォラステロの中でも
様々な掛け合わせで品種改良が進んでいます。
トリニタリオはクリオロが育っていたトリニダード・ドバゴに
フォラステロを持ち込み交配させたのがその名前の由来で
比較的病気に強く、それでいてクリオロのような優しく
柔らかいアロマを持つのが特徴です。
まあ以上が一般的なチョコレートやカカオの本・ネットに
載っていることなんですが、これだけじゃ付加価値がないので
私なりの知見・意見をシェアしたいと思います。
まず、Dari Kのスラウェシ島のカカオ。
これはおそらくフォラステロかトリニタリオに分類されます。
ここで「おそらく」と書いたのは、現地の農家の方はもちろん
スラウェシ随一の総合大学であるハサヌディン大学の
農学部でカカオの研究をしていた人らに聞いても
彼らはこの3つの品種を理解しているものの、スラウェシで
栽培されているのがどれか厳密に分類できていないのです。
クリオロの苦味が少ないのは、ポリフェノールが少ないからで
生のカカオ豆を真っ二つに割ると、通常ポリフェノールは
紫なので豆は紫色になっていますが、クリオロだと色素が
少ないため薄紫~白っぽいはずです。
私が現地で収穫したてのカカオ豆を割ってみたところ
濃い紫(これは間違いなくフォラステロ)もあれば
薄紫や白っぽいものもありました。なので私自身も
見分けがつかなかったのが率直なところです。
スラウェシのカカオ農家はカカオの苗を政府が与えて
くれます。この苗は、前述のハサヌディン大学や海外の
NGOのプロジェクトにより開発されたもので
収穫しやすいようにカカオの木が上に伸びすぎないように
2メートルくらいで成長が止まって、その分栄養を実に
いくようにしたものや、病害虫に強いものです。
これらは当然掛け合わせたものなので、まずクリオロでは
ありませんが、中には樹齢20~30年のカカオの木もあり、
大きく太い幹のそれらの木は「ローカル」と現地の人には
呼ばれています。掛け合わせたものではないようで
ずっと昔にインドネシアにカカオがもたらされた時の
末裔だとしたら、もしかするとクリオロなのかもしれません!
それはさておき、私が声を大にして言いたいのは、
「クリオロは稀少なのは分かる。でもクリオロが全てではない」
ということです。
チョコレートに詳しい人や、カカオマニアの方、
お菓子の専門学校に通っている方などでカカオの品種のことも
知っている人は、ふたことめには「それってクリオロ?」と
聞いたり疑問に思う傾向があるように感じます。
でもクリオロだったら何なの?クリオロじゃなかったら何なの?
私はそう思ってしまいます。食べてみて美味しかったら
それでいいんじゃないのかな。「クリオロ=稀少」これは
成り立ちますが、「クリオロ=美味しい」これは必ずしも
そうとは限らないし、「クリオロの味>フォラステロの味」とも
思いません。
「うちのチョコレートは豆からこだわってます」こんなことを
売り文句にしているチョコレート屋やお菓子屋さんは日本全国
ごまんとあります。でも、彼らはクリオロなら稀少だから美味しい、
クリオロは値段が高いから美味しい、そう思ってるだけのように
感じてなりません。
実際どれだけの人が、そのクリオロ(とパッケージに書いてある)
ものの真価を分かるのでしょうか?カカオは農産物です。
ワインを例にあげると分かりやすいので、ここでも
またワインになぞってみますが、有名なシャトー(ワイン農園)の
ワインはもちろん高価です。でもブドウも農作物ゆえに、
毎年美味しいワインができるかと言えばそうではなく
年によってあたりはずれがあります。
Aのシャトーのワインなら必ず美味しいというのは、本当のワイン通
でないからそう信じたいだけで、本当にワインを評価できる
舌があるのだったら、Aシャトーの2002年はハズレだから、
有名でないけどBシャトーの2002年の方が口当たりもよく美味しい、
そう思うのではないでしょうか。
話を戻して、カカオの味を決定付けるのは、品種ももちろん
ありますが、それ以上に収穫後の過程、つまり発酵にあると
私は思っています。「クリオロ」とラベルに書いてあるので
それを崇(あが)めるようなことをする人の一体誰が
収穫後の発酵の過程を気にするでしょうか?カカオ豆を
発酵させること自体知っている人はほんの一握りだと
思います。
私はインドネシアのカカオ豆がクリオロより美味しいと
証明する自信があります(もちろん私自身クリオロの
チョコレートを食べたことはあります。そしてクリオロと
書いてあっても、おいしいものもあれば期待はずれのものも
ビックリするくらい多くあることを知っているつもりです)
なぜ私はインドネシアのカカオ豆にそんなに自信があるのか?
それは自分自身で豆を発酵させ、発酵の具合でどれだけ
豆の味が変わるのかを身をもって経験しているからです。
発酵も色々試したし、焙煎(ロースト)から全て自分でやっている。
だからこんなに強気なことが言えるのかもしれません。
ちょっと熱く語ってしまいましたが、今日のカカオ101のまとめは
「カカオは大きく分けるとクリオロ、フォラステロ、トリニタリオの
3種類がある。クリオロは病害虫に弱く、生産性も低いため稀少。
ほとんどのチョコレートの原料カカオはフォラステロ種だが
その品種よりも発酵の具合によって味は変わり得る」といった
ところですかね。
最後に、クリオロは苦味が少ないけど、それは裏返せば
ポリフェノールが少ないということなので、癌や糖尿病などの
カカオの効能を期待するのであれば、やはりフォラステロや
トリニタリオの方が栄養面でもベターです!!
明日9月7日から9日までは大阪でFOODTECHに出展です。
初日には講演も控えています。期間中少しでも多くの人に
カカオの面白さ、インドネシアのポテンシャルについて
気づいてもらえたらと切に思います。