前回ブログを書いたのが2021年の6月(なぜ私がチョコレート・ドリンクにこだわるかについて)なので、ブログを書くこと自体が約1年ぶりと非常に間が空いてしまいました。
この1年は(この1年「も」ですが)色々なことがありましたが、Dari Kにとっても、自分自身の人生にとっても最大の転機といえば、2022年1月14日のDari Kのロッテグループ入りです。
この背景についてはロッテの子会社化のお知らせに記載の通りではありますが、1月中旬にロッテグループに入って約3か月が経った今、自分が感じていることについて書いてみようと思います。
ちなみに、ロッテによるDari Kの子会社化については、ロッテ牛膓(ごちょう)社長と私が色々な媒体で取材を受け、記事にしていただいておりますので、下記をご覧いただけますと幸いです。
【トップ直撃】ロッテ、Bean to Barのチョコメーカーを買収
ロッテはなぜ、チョコのダリケーを子会社にしたか 社長2人に聞く
さて、1月にDari Kはロッテの完全子会社になったわけですが、現時点ではその影響が外に出ているかというと、まだ目に見える形で出ていないので分かりづらいかもしれません。実際、資本的にはロッテはDari Kの100%株主ではありますが、Dari Kというブランドは変わらず存続していますし、Dari Kという会社で働いている社員も全く変わっていません。
目に見える形で変わったことといえば、これまで四ツ谷にあったDari Kの東京オフィスを新宿(初台)のロッテ本社の中に移したことと、私はこれまで京都をベースにしていましたが、今は東京をベースにして、たまに京都に出張するようになったことくらいでしょうか。京都の本社や営業オフィス、店舗は一切変わらず、またそこで働いている人も変わっていないので、Dari Kという会社的には、外から見ると大きな変化はないように見えると思います。
私はよく「氷山の一角」という表現を好んで使いますが、まさに今のDari K、あるいは今の私自身はこの表現にピッタリかもしれません。水上に見えている部分はロッテグループに参画する以前と以後ではほぼ変わっていない一方で、水面下つまり外から見えない部分では大きな変化を感じ始めています。
それは何かというと、次の3つになります。
①リソースの増加
②経営視点の増加
③外部環境に対する感応度の上昇
自分への整理を兼ねて、順番に見ていきたいと思います。
①リソースの増加
分かりやすく言えば、経営判断を下す時に、ロッテおよびそのグループのリソースを使えることを前提に考えることができるようになったということです。
これまで経営判断を下す時は、Dari Kとして持っているリソース(ヒト・モノ・カネ・設備・情報など)の中で最適な組み合わせになるよう思考を巡らせていました。しかし今は、その使えるリソースがロッテグループまで大幅に拡張したので、圧倒的に可能性が広がったと実感しています。
例えていうなら、これまでは、自分が持っているA3の画用紙と10色の絵具と1本の筆で絵を描くのが日常だったのが、今は紙のサイズは1mを超えるものでも使えるし、絵具は100色になり、筆の種類も10種類くらい使えるようになったイメージです。
これは大きな変化で、経営判断における自由度が圧倒的に増加したと言えるのですが、逆にこれまでずっと制約の中で絵を描いてきた自分にとって、急に使えるリソースや選択肢が増えたことに対して、嬉しい反面、早くこれに慣れないといけないなという風にも感じています。
10色しか持ってなかった絵具が急に100色になったのはいいけれど、これまで持ってなかった90色がどんな色なのかをまだ完全には把握できていないし、筆の数が1本から10本に増えたけど、増えた9本の筆の感触や特徴をまだ掴み切れていないような感じです。
2011年に設立してから11年、Dari Kは徐々に活動内容を広げ、ビジネスも成長し、徐々に出来ることも広がってきたものの、基本的に会社の経営判断は、身の丈より少し大きなところまでで完結していました。なので、いざその制約が急に取り払われても、一体どのリソースを使えばよいのか若干迷ってしまうというのが正直なところ。
ただ、これは使えるリソースの種類や特徴を理解すれば解決できる問題であり、今は大きなワクワクと若干の焦りのはざまの贅沢な悩みと捉えています。
②経営視点の増加
これはどういうことかというと、私は従前と変わらずDari Kの社長なので、当然日々の経営に関する判断や決断はDari Kのビジョン・ミッションに基づいているか、パーパスに沿ったものか、そしてそれによって会社に、あるいは生産者や環境、ひいては社会にどんなインパクトを与えるかを考えながら行ってきました。
しかしDari Kがロッテグループに参画してからは、上記に加え、親会社としてのロッテへの影響ということも考えるようになりました。要は、これまでDari Kとロッテという会社は同じ菓子業界にはいるものの全く独立した関係だったこともあり、また商品や価格、生産方法や販路など全く異なっていたので、例えばDari Kが新商品を出す時に、それがロッテを含む大手企業へ与える影響を考えることは皆無でした。
しかしながら、今は例えばDari Kがある商品を出すとすると、Dari Kにとっての意義はもちろんですが、それがロッテにとってはどのようなインプリケーション(意味)があるのか、ロッテグループとしての商品ポートフォリオが間接的にどう広がるのか(あるいは広がらないのか)、などロッテの視点も踏まえて考えるようになりました。
Dari Kのある商品、あるいはある施策がお客様の評価を得た場合、そのエッセンスをロッテに導入することができればロッテにとってもお客様にとってもwin-winになるわけで、これまで「0から1」を作ったとしても、「1から10」、「10から100」も全てDari Kで完結させなければ社会に大きなインパクトを与えることはできないと考えていましたが、同じグループになった今は、Dari Kで「0→1」ができれば、「1→10」、「10→100」のスケール化はロッテに引き継ぐことも可能なわけです。
大きなメーカーが何か始める時には、それは新商品を出すのであれ、新しい取り組みをするのであれ、企画から開発、原料の手配、製造ラインの調整、小売との商談、品質の担保、全国の営業担当への周知と宣伝広告を含むプロモーションなど実に多くの人を巻き込み、また相応の時間をかける必要があります。
もしDari Kが小さく始めたことで「0→1」の部分を担うことができれば、上記のプロセスを少しばかり早めることに貢献できるかもしれませんし、そうなれば単にDari Kの取り組みとして完結するものではなく、ロッテグループ全体へのメリットにもなるわけで、これは一例に過ぎませんが、このように経営視点が増加した分、これまで以上に一歩先を読む洞察力が磨かれつつあるように感じています。
③外部環境に対する感応度
既に新聞の報道などで目にされた方もいるかもしれませんが、4月1日から私はロッテの執行役員(担当:経営戦略部/ESG推進部/コーポレートコミュニケーション部)を拝命しました。
今年に入ってからロシアのウクライナ侵攻、それに伴う原油およびコモディティ価格の急騰、アメリカの利上げに起因する為替の円安など外部環境が劇的に変化する中で、Dari Kの経営だけを担っていたらどこか距離があったこのような世界情勢の動向も、今は親会社であるロッテの経営にも深く携わるポジションにいるため、今は非常にセンシティブに捉えています。
世界情勢の動向が企業活動に及ぼす影響をロッテ執行役員としてつぶさに感じる中、通常であれば、Dari Kとロッテの規模の違いゆえにここが最も慣れないところかもしれません。
しかし、ここは僭越ながら自分の強みが最も活かせる分野かと思っています。というのも、Dari Kを創業する前は、金融業界とりわけグローバルなヘッジファンドでアナリストをしていたので、経済情勢がどうなると次にどのようなことが起こるか、それによってどのような業種にどのようなインパクトがどれくらい生じるかをシミュレーションするのが日課だったからです。
今となっては10年以上前にやっていた仕事ではあるものの、サブプライムローンに端を発してリーマンショックが起こり、それが引き金となって多くの企業が収益に大きなダメージを負ったあの時代をヘッジファンドのアナリストとして常に先読みして投資をしていた身としては、昔取った杵柄(きねづか)かもしれませんが、不透明性を増している今の世の中だからこそ、ロッテの社長をはじめ経営陣の方々と次の一手を考え実行に移していくのは、ワクワク以外に何も感じません。
話はいろいろ飛びましたが、Dari Kとロッテグループのシナジーという点においては、この4月からロッテ内にカカオビジネスの可能性を拓くことに専門的に取り組む新しい部署が生まれ、Dari Kの視点を深堀りしたり、フードテックの芽を共に育む体制が整いつつあります。また、ロッテの子会社であるメリーチョコレートや銀座コージーコーナーに商品開発の点でアドバイスをいただきながら、Dari K商品のパワーアップを図ったりもしています。
そういえば、グループ入りしてこの3ヵ月の間に、嬉しいことが多々あったのですが、特に嬉しかったこと。それはロッテには、非常に熱い想いや強い信念を持ってる社員の方が非常に多いことです。これは特に若い世代に顕著でした。「ロッテのここが好きなのでもっと伸ばしたい」「ここはこう変えていきたい」「Dari Kのこういうところを取り入れたい」。私はこれまでの経験から、勝手に「大企業の社員=現状に満足してる人が多く、新しいことへのチャレンジはちょっと面倒に思われてしまうのではないか」という不安を持っていました。しかし、これは嬉しい誤算で、完全に自分の偏見だということが露呈し、むしろ大変心強く感じています。
実際、朝7時からオフィスに来て働いている人も多くいますし、良い商品を作るため、あるいは新しい事業を作るため、みんなとても頑張っています。自分一人がどんなにしゃかりきに頑張っても、結局組織である以上、全体が動かないと前に進みません。Dari Kの社員は非常に強い信念とガッツがある人が多いですが、ロッテの社員も同じと分かってとても頼もしい限りです。
そんなことを考えながら、日々新しい環境で働いていたらあっという間に3か月が過ぎました。All-winな社会の実現に向けて、Dari K&ロッテは水面下では相当ハイスピードで動いています。近い将来、水上で見られるであろうその成果をぜひご期待ください!