新作 │ 発酵にこだわるチョコレートトリュフ

dari K to the World
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【カカオ101】 発酵編

久しぶりにカカオ101講座をしたいと思います。
前回、前々回を読んでいない人は、そちらを先に
ご覧頂くことをオススメします。
カカオは収穫後、実を割って白いフルーツ(パルプ)を
取り出すわけですが、このパルプを一つずつ取って
発酵の作業に入ります。
以前から何度か説明していますが、パルプの成分は
大半の水の他に15%くらいの糖があります。
この糖が、イースト菌やバクテリアの働きで
分解され、アルコールになり、やがて酢酸になるわけです。
ぶどうが発酵してその糖分がワイン(アルコール)になり、
そのまま発酵が進むと酢(ビネガー)になるのと原理は
同じです。
この発酵の過程でパルプの成分が豆の中に染みこみ、
チョコレートとしてのアロマやフレーバーをはじめて
もちます。発酵をさせないと、カカオ豆はカカオの実の
種なので、芽を出そうとしますが、発酵により発芽作用が
抑えられ、チョコの原料として新たな息吹を授かる。
ということは、逆に言えば発酵をしないと美味しい
チョコレートにはならないのです。
「発酵なくして、美味しいチョコレートなし」
この言い方、小泉首相を彷彿とさせますね。
まあいくら元の実が良くできていても、その後の過程が
しっかりしていないと、良い素材にはならないのは人間と同じ。
良い家に生まれたとしても、甘やかされてしっかり育てられないと、
きちんとした大人にはならない。この比喩、なんかシュールですが(笑
それで、肝心の発酵のやり方ですが
木箱に入れたり、バナナの葉で覆ったり、麻袋に入れたり、
ビニール袋に入れたり、色々な方法があるのですが、
私が様々な文献を読んだ感想としては、やはり
バナナの葉で覆うのが一番良いようです。
ただバナナの葉で覆うと一口にいっても、パルプを
木箱に入れて上にバナナの葉を置くこともあれば、
地面にバナナの葉を敷き、そこにパルプを入れ
そしてまたバナナの葉で覆うなど、バリエーションは
いくつかあります。
なぜそれが一番いいのか、それを科学的な根拠というか
数字で証明している書物を読んでいないので分かりませんが
たいがい「バナナの葉で覆うのが一番発酵方法として
良いとされている」と書いてあるんですよね。
でも、ですよ。
確かにバナナの葉で包むのが一番いいのかもしれないけど
そう言うからにはやっぱり数字で示して欲しいですよね。
色々な発酵方法を試した後のカカオ豆の成分の違いを。
それに、ですよ。
バナナの葉っていうのは、カカオ農園ではシェードツリー
(カカオは直射日光に弱いので、背の高い木を植えることで
日陰を作ってやります。この役割をするのがシェードツリーで、
バナナや椰子の木がよく植えられています)としてあるから
使われているだけで、もしかしたらパパイヤの葉がいいかもしれないし、
他の葉っぱがいいかもしれない。
また単に覆うだけでなく、そこにたとえばバナナそのものを
混ぜたらバナナのような匂いがついたり、バニラを入れて
バニラフレーバーにしたり、そんなことできちゃうんじゃないの?
なんて想像が膨らみます。
これまでチョコレートのフレーバーとして、イチゴや抹茶など
日本でも色んなアレンジがされていますが、どれもホワイトチョコを
使っているんですね。ホワイトチョコは、カカオバターという
カカオ由来の油脂分を使っているから「チョコ」という名前を
与えられていますが、このカカオバターは無味無臭なので、
実はカカオ豆のカカオたらしめる重要な部分は抜かれているんです。
まあ、無味無臭の油に粉乳をいれて、ちょっとミルクの味に
なったものがホワイトチョコなので、これにイチゴでも抹茶でも
合わせるほうが、イチゴや抹茶の味を邪魔しないから
扱いやすいのですが、やっぱりカカオ豆から手がけるDari Kとしては
無味無臭のカカオバターよりもしっかりフレーバーがついた
カカオ豆を全部丸ごと使って、アレンジしたいと思うわけです。
話が逸れましたが、発酵はとても大事で、従来の発酵の
やり方を踏襲するだけでなく、ちょっと実験してみると
おもいしろいことになるかもしれない、というのが私の
一つのアイデア(仮説)です。
翻って、発酵は重要だけれども、重要ゆえに
発酵の具合をチェックすることも重要です。
カカオ豆の外見だけでは発酵の具合をチェックできないので
カカオ豆を真っ二つに割り、中の豆の色や組織を
見る必要が出てきます。そうして割った豆がこちら↓
ss-CIMG4798.jpg
こうやって割って、チェックするんです。
おー、これはうまく発酵されてるね~、なんて会話は
日本ではまずないでしょうが、現地では
それをしっかりやらないと、「ちゃんと発酵したよ」
なんて調子のいい嘘をつく人がいるかもしれないから要注意。
「それではちょっと調べます」なんて言って
カッターで豆を半分に切り出したら農家の人も
びっくりするでしょうね。
今はびっくりしてもいいんです。
でもインドネシアの豆が、世界でも高品質な豆として
認められるためには、徐々に徐々に、農家の人自身が
発酵した豆の具合をチェックして、自信を持って出荷する、
そんな日が来なければなりません。
こういうことは一朝一夕にはできない。
だからこそ、根気よく粘り強くやらなければいけないし、
そのためにはたゆまぬコミュニケーションとお互いの信頼関係が
必須です。
That's why I call "Dari K" my life-long project!
(だから私は「Dari K」を人生をかけたプロジェクトと
呼んでいるのです)
発酵はヨーロッパでやるものでもアメリカでやるものでも
日本でやるものでもない。それはカカオ生産国でやるもの。
だから、本当に美味しいチョコレート作りのためには
現地で素材の品質を上げるようにしなければならない。
今Dari Kではホテル日航プリンセス京都のカフェ&ダイニング
アンバーコートさんでのチョコレート予約販売をはじめ、
ホテルグランヴィア京都のフランス料理ラ・フルールさんでの
カカオやカシューナッツのお料理へのアレンジ、
ベルギービールをメインに世界のお酒をリーズナブルに
お取り寄せできるすがやさんなどでお使い頂いております。
こうしたご縁が出来たのも、カカオ豆の「発酵」から
こだわっているからこそ。こうした本物志向のホテルや飲食店、
セレクトショップと今後もパートナーシップを組むことで、
分野は違えど上質なものへの追求を一緒にしていくことは、
日本の食の発展に寄与するものと思います。
以上、発酵の重要性でした。
やばい、もう朝の4時ですね!寝なければ!!